いきもの通信 EXTRA 2「季刊Relatio」連載「動物事件の読み解き方」補足第2回 マッコウクジラ座礁事件 

EXTRA 2(2000/10/8)

「季刊Relatio」連載

「動物事件の読み解き方」補足

第2回 マッコウクジラ座礁事件

※この記事は「季刊Relatio(リラティオ)」連載「動物事件の読み解き方」をお読みになっていることを前提に書いています。ぜひ「Relatio」の方もご覧ください。
(参照 EXTRA 0)


魚だって座礁する

記事ではクジラ・イルカについてしか書いていませんが、アシカ、アザラシ、ジュゴンなどの海に棲む哺乳類も座礁することがあります。これらの動物についての処置方法は記事に書いたクジラ・イルカの場合と同じでいいと思います。
他に座礁する動物には魚類がいます。魚類は空気中では呼吸ができませんから、ほとんどの場合、座礁=死体漂着となります。魚は種類が多く、珍しくもない魚も座礁するため、必ずどこかに通報しなければならないようなものではありません(タイやヒラメが漂着したからといって通報する人なんていませんよね)。どういう時に通報が必要かという基準も存在しないのですが、私の個人的な見解としては「3m以上の大きさ」の魚は通報した方がいいと思います。大きな魚は珍しい種類である可能性が高いからです。また、3m以上の魚はサメの仲間である可能性が高いでしょう。魚の座礁の通報先は、自治体はもちろんですが、その他には大学(農学部あるいは水産学科などがある大学)、水族館、水産庁の機関などが適当でしょう。

メガマウスというサメの話

珍しいサメのひとつとして、メガマウスのことについて特に紹介しておきましょう。メガマウスはその名の通り「大きな(mega)口(mouth)」を持つサメで、全長は5mにもなるといわれます。ところがこのメガマウス、生きている姿が目撃されたことはなく、漂着死体の報告例も全世界で10例ほどしかないという謎のサメなのです。その内の3例は日本でのもので、日本近海にも棲息しているらしいのです。この死体のうちの1つは福岡市にある水族館「マリンワールド海の中道」で保存展示されているはずです(博多湾に漂着した死体を保存している)。私も以前この展示個体を見たことがあるのですが、一見サメには見えない奇妙な魚でした。とにかく大きく、サメらしくないため、知らない人には「謎の巨大生物」にしか見えないでしょう。いや、メガマウスは学問的にも本当に謎の動物なのですからそれも当然でしょうが。

メガマウスはチョコエッグ(おまけつきチョコレート菓子)の「日本の動物コレクション第4弾」(2000年秋発売)のフィギュアの1つとして収録されています。興味のある方はチョコエッグを買い込みましょう(苦笑)。

クジラと魚の見分け方

現実に「魚かクジラかわからない」動物に遭遇した場合、これらの見分け方を知っておけば役に立つこともあるでしょう。
1つの見分け方は、「クジラには噴気孔があり、魚にはエラがある」ということです。噴気孔とは要するに「鼻の穴」で、体の上面にあります。一方、エラは体の左右両側面にありますので見分けは簡単です。普通の魚のエラは左右に1つずつですが、サメ(エイも同じ)はスリット状のエラ穴が複数(5〜7つぐらいが多い)あります。
もう1つの見分け方は尾びれのつきかたです。クジラの場合は尾びれは水平に(横に平らに)ついていますが、魚なら垂直に(縦長に)ついています。
これらの見分け方は哺乳類と魚類の根本的な体のつくりの違いを示してもいます。

クジラ・イルカの座礁は迅速に対処すれば生きたまま海に帰すことも可能なので、すぐに通報することが重要になります。クジラか魚か見分けられない時は、地元の水族館などの専門家に来てもらって判断してもらうのがいいのはもちろんですが、上記の見分け方を知っていてクジラか魚かの区別をすぐに通報できれば、より適切な対応をより早くできるかもしれません。

関連ホームページ

国立科学博物館・海棲哺乳類ストランディング情報データベース<http://svrsh1.kahaku.go.jp/index.htm>

日本鯨類研究所<http://www.icrwhale.org/index.htm>

これらは記事の最後にも書いておいたホームページです。
国立科学博物館のホームページには日本のストランディングのデータベースがあります。最近のデータはまだ入力されていないようですが、実情を知ることができる情報です。

今回の記事でコメントをいただいた科学ジャーナリスト・写真家の水口博也氏は「Sphere(スフィア)」という会員向け季刊誌を発行しています。書店では扱っていない定期購読誌です。同誌はクジラ・イルカ類など海の動物を中心にした写真を多数掲載しています。水口氏による美しい写真をたくさん見ることができるほか、国内・海外の写真家、研究者の寄稿もあります。ホームページでは購読の申し込みもできます。(私も定期購読しています。)

参考になる本

クジラ・イルカを知るための本は、「いきもの通信」の連載で以前に取り上げていますのでそちらをご覧ください(Vol. 54)。

ストランディングについて特に詳しい本としては次のものがあります。

ストランディングフィールドガイド 海の哺乳類
著:Joseph R. Geraci, Valerie J. Lounsbury
監訳:山田 各、天野 雅男
発行:海遊舎
初版発行日:1996年8月10日
価格:7000円
ISBN4-905930-74-X

この本は北米の現状に基づいた内容で、ストランディングへの対処法やデータ収集の方法についてをまとめています。日本での実情にはあわない面もあるかもしれませんが、現実的なマニュアルとして注目していい内容です。ただし、クジラなどの哺乳類の専門家向けの内容で、一般向けではありません。


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