前回の「楽しいハト観察」からずいぶん間が空いてしまいました。今回は、ちょうど内容に合った写真の撮影に成功しましたので、久しぶりにハトの話の続きをします。
さて、前回はハトの「ナンパ」についての話でしたが、ナンパがうまくいってカップルが誕生すれば、次はいよいよ交尾となります。一般的に、鳥の交尾を見るのは非常に難しいことです。鳥は警戒心が強く、特に交尾の時は慎重になるため目撃されることが少なくなってしまいます。さらに、鳥の交尾は非常に短い(普通は十秒もかからない)ため目撃はますます困難になってしまいます。皆さんも実際に鳥の交尾を見たことがある人は非常に少ないのではないでしょうか。ところが、ハトの場合は例外的に非常に簡単に交尾を観察することができます。私の場合、たまたまハトのそばを通りかかっただけ、という状況でも年に1〜2回はハトの交尾を目撃しています。また、簡単と言っても、それと知らなければ交尾を観察することは難しいかもしれません。そこで、かなり確実にハトの交尾を観察できる方法を紹介しましょう。
まず場所です。ハトが日常的に集まっている場所、駅前とか神社とか公園がいいでしょう。日常的にハトがいるということは、そこで繁殖しているということですから。できれば、人が少ない(エサをあげる人が少ない)場所の方がいいでしょう。ハトは「色気よりも食い気」のようで、エサをばらまかれたらそっちの方に行ってしまいます。また、カラスが少ない場所の方がいいでしょう。カラスがいるとハトが警戒して交尾どころではなくなるからです。
次に季節。ハトには繁殖期が無いため、交尾はおそらく年中見られるはずですが、猛暑や極寒の日ではおそらく観察できないでしょう。少々暑いぐらいなら涼しい林の中などで交尾することもあります。ですが、最もよく交尾が見られるのは4〜6月頃の快適な気温の頃でしょう。鳥一般の繁殖期もちょうどこの時期ですし、ハト本来の繁殖期もやはりこの季節なのでしょう。以上の条件を満たせば、あとはひたすら交尾を待つだけです。ハトの集団をじっと観察しましょう。2羽で一緒に行動をしているハトがいれば、それがカップルです。カップルを見つけたら、その行動を目で追いましょう。ちなみに、ナンパ(オスがメスを追いかけること)からすぐに交尾になることはないので、そういうカップルは除外してかまいません。相思相愛のカップルは2羽連れだって行動しますので区別は容易なはずです。
ハトが交尾をする時は必ず直前にそれとわかります。というのも、交尾の直前にはかならず「愛情表現」をするからです。そのため、ハトの交尾を撮影するのは非常に簡単なのです。愛情表現には私が観察する限りで2種類あります。
1つ目は「首のつつきあい」です(写真上)。お互いがお互いの首のあたりをつつきあう行動をします。「お互いに羽づくろいをしている」という親密さを感じさせる行動です。
2つ目は「熱烈キス」です(写真中)。ホントにキスします。くちばしを相手のくちばしに突っ込むほどの熱烈さです。写真ではよくわからないかもしれませんが、確かに突っ込んでます。
これら2つの愛情表現は同時に両方ともやることはないようで、どちらかの行動だけが見られます。
ハトに限らず、鳥は一般にいろいろな「愛情表現」が見られます。ある鳥はダンスを踊り、ある鳥は豪華な巣を作ったりします。鳥の愛情表現はとても豊かだと言えるでしょう。さて、この愛情表現が一段落つけば、いよいよ交尾です。メスが姿勢を低くしてオスがその上に乗れば交尾成立となります(写真下)。交尾の時間は数秒〜10数秒といったところでしょうか。あっと言う間です。続けて交尾を行うことはなく、交尾の後はまた普通の行動に戻ります。
このように、ハトの交尾の観察は比較的容易なのですが、実際にどれくらいの頻度で目撃できるかというと、上記のような場所なら2〜3時間に1回という程度です。そんなに時間が必要なのか、と思われるかもしれませんが、条件さえそろえばかなり確実に目撃できます。
以上の話はハト(ドバト)の交尾についてですが、「愛情表現」はキジバトも同じようなものです。私もつい先日キジバトの交尾を目撃しました。自宅の窓からふと外を見ると、電線にキジバトが2羽とまっています。しかもお互いの首をつつきあっているのです。「うわっ、ラブラブじゃ〜ん!」と思ったら、メスの上にオスが乗って(電線の上で!)交尾を始めたのでした。
キジバトはドバトと異なり、基本的には単独行動をする鳥です。もし、キジバトが2羽並んでいたら、それは確実につがい(夫婦)です。観察していれば交尾を見られるかもしれません。
Vol. 96(2001/7/22) 楽しいハト観察 その3 ハトの水飲み
Vol. 23(1999/10/24) 楽しいハト観察 その1 オスとメスの見分け方
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