東京のカラス問題は相変わらずで、今年もまたいくつかのテレビ番組でカラス被害が紹介されました。毎年毎年この繰り返しで、何も改善はされていないようです。しかし、私から見れば解決の方法はきわめてはっきりしているのです。それはどのような方法か、今回はその話です。
(Vol.13でも似たような話題を取り上げましたので今回は再論となります。)
先ごろ東京都がいよいよカラス退治に本腰を入れ始めた、という話を耳にしました。石原知事がようやく事の重大性に気がついてのことだそうですが、やったことはカラスの巣を下ろしただけだったとか。その後の活動の様子はまったく伝えられていませんので、本格的に継続していることなのかも不明です。
かなり以前からカラスの問題が指摘されているにもかかわらず、東京都ではほとんど無策の状態が続いています。専門家からは「東京のカラスの数は多すぎる」との指摘もあり、問題を根本から解決するにはカラスの数を減らすことが急務です。カラスをおどかす小道具などでは根本的な解決はできません。また、カラスを捕殺しようとしても、そう簡単にわなにはひっかかりませんし、住宅地で猟銃をぶっぱなすわけにもいきません。
それでも、カラスを確実に撤退させる方法はあります。それが「ゴミの夜間回収」です。
私は福岡市で生まれ育ちましたが、10年前に東京に来て最初に驚いたのは、ゴミを昼間に回収しているということでした。そしてそれに群がるカラスが多いことにも。昼間にゴミを放置しておくのは、カラスにエサを与えているも同然です。夜間回収がどれほど効果的かは、ずっと以前から実施している大阪市や福岡市の状態を見てみれば一目瞭然です。私が福岡市にいたころは市街地でカラスを見かけることはあまりありませんでした。
昼間の放置ゴミがなくなれば、カラスは別の所でエサを探さなければなりません。木の実や野ネズミのような自然の中のエサを求めなければならないので、自然と都心から撤退していくでしょう。ゴミの夜間回収は、最も穏便で平和的な解決方法なのです。
ただし、幾分かの懸念もあります。まず、カラスの一部は夜行性になっていて、効果が無い場合もあるかもしれません。といっても、大半のカラスは昼行性なので全体としては問題ないでしょう。もうひとつの懸念は、ゴミというエサが減ることで、(空腹で)凶暴化したり、小鳥(ドバト、スズメ、ツバメ、シジュウカラ、メジロなど)を襲ったりするようになることも予想されます。この影響がどれぐらいになるかは見当もつきません。この影響を最低限にするためには、夜間回収の開始時期は春〜夏の鳥の繁殖期を避けるべきでしょう。もうひとつカラスの撤退作戦をあげましょう。それは「カラスの巣の撤去」です。これはカラスの繁殖率を下げるための補完的な方法です。
カラスの巣は子育てのために使われ、その時期以外は使用されることがありませんが、古い巣は再利用することも多いので、通年で撤去するべきです。
ただし、この作業は危険も伴います。子育て期間(繁殖期)中は、カラスは子供を守るために非常に攻撃的になります。「カラスに襲われた」という事件が起こるのも春から夏にかけての繁殖期です。そういう時期に巣を下ろそうとすると、カラスも必死で攻撃してきます。あの大きなくちばしで、ぐさり、と突かれた例もあります。ヘルメットをかぶり、厚手の服を着るなどの防護対策が不可欠になります。
この「巣の撤去」作戦を実行する上で現実的な問題点は、東京都23区内だけでも数千のオーダーの巣があることは確実で、人手がおそらく足りないということです。カラスの巣の撤去のためだけに東京都がどれだけの予算と人手を調達できるかが重要ですが、実現性は低いかもしれません。実現できても、この方法は地道で補完的な方法です。「ゴミの夜間回収」と同時に実行してこそ最も効果的でしょう。以上の「ゴミの夜間回収」「巣の撤去」両作戦を実施すればカラスの撤退は確実です。特に、「ゴミの夜間回収」だけでも大きな効果があるでしょう。これはかなり以前から指摘されていることです。にもかかわらず、東京都がそれを実行しようとしないのはなぜなのでしょう?
ひとつの原因は都民自身の問題意識でしょう。これだけ長きにわたって「カラス問題」が騒がれているにもかかわらず、都行政当局が何もしないのは、都民からの要求が少ないからなのでしょう。カラス問題で都民が要求するのは、「ゴミが散らかされた」「襲われた」といった個々の立場からの要求で、「都全体のカラス数を抑制しろ」「ゴミの夜間回収をしろ」という大局的な要求ではありません。個々の要求は非常に散発的なものですから、行政当局も本気で取り上げようとしなかったのでしょう。
そうなると、都の行政当局自身がこのカラス問題をどれだけ意識しているかが重要になってくるのですが、残念ながら行政当局はカラス問題を行政の問題とは考えていないようです。「ゴミの夜間回収」が実行されないもうひとつの原因は行政当局のこの無関心にあるといえます。カラスがここまではびこった原因は、あきらかにゴミにあります。ゴミの回収方法に気をつけていれば、現在のような事態は避けられたはずであることは、大阪市や福岡市を見れば明らかです。しかし、都行政側(ずばり指摘すると、清掃局(※下記追記参照))はカラスは自分たちの管轄外であると考えているようです。これではいつまでたってもカラス問題が解決しないのも当然です。カラス問題は、都行政当局が責任をもって最も効果的な対策をとらない限り、根本的な解決は難しいでしょう。また、住民側も多少のコスト増を承知し、対策に協力する姿勢が要求されます。カラス問題はもはや片手間で対処できる事ではないのです。
※追記
後で調べてみたら、現在東京都には「清掃局」はありませんでした。ゴミ収集は各区市町村が独自に行うことになっているのです(何年か前にそうなった)。これでは広範囲にわたる協調も期待できそうにありません。が、どこかの自治体が率先して夜間回収に取り組み、カラス問題に効果を上げれば他の自治体も追随するかもしれません。カラス問題に積極的に取り組む自治体の出現を期待しましょう。
(2000/7/30)