数百羽のカラスたちの注目の的になった話
以前、福岡市今津湾にクロツラヘラサギをみに行った話を書きました。その時、数百羽のカラスに遭遇したことも書きました。その当時はこのカラスたちはハシボソガラスだと思っていたのですが、どうもミヤマガラスだったようです。ミヤマガラスは冬に九州に渡ってくる渡り鳥で、大きな群れで行動する種類です。農作地にいるという生態からも、あれがミヤマガラスだったのだと判定できます。
このミヤマガラス数百羽がとまっていた電線は、往復1車線ずつの道路に沿っているものです。この道路はこの周辺では最も幅が広く、バスの路線でもあります。年末とはいえ、車もぽつぽつと走っています。人間はあまりいなかったかと思います。私はこの電線の下を通らざるをえなかったわけですが、これだけ多数のカラスがいるとさすがに緊張します。まあ、襲われることはないだろうと思ってましたが。電線の下を歩いてみると、カラスがこっちを見ているらしいことが感じられます。上を見て確認したいのですが、そんなことをするといっせいに逃げてしまうでしょう。私が注目された理由ははっきりしています。その時の私はクロツラヘラサギを撮るために、三脚(ビデオカメラ付き)を肩にかかえ、一眼レフカメラを首からぶらさげているという、カラスにとっては警戒すべき怪しい人物だったからです。カラスはカメラ類には非常に敏感で、カメラの有無で警戒の度合いがかなり違ってきます。ですから、カラスの写真を撮るのは実は意外と難しいものなのです。さて、この時はカラスを驚かすことなく無事通過しました。その数時間後、同じ場所を通って帰ったのですが、この時はミヤマガラスの姿は周辺にもまったくありませんでした。あれだけの数のカラスがいったいどこへ行ったのか、不思議に思いました、カラスにはどこまで近づける?
カラスというと強い鳥のように思われがちですが、実際には人間を非常に警戒します。カメラを持っていなくても警戒します。例えば、あなたがゴミをあさっているカラスをじっと見つめて近づいていけば、カラスたちは間違いなく逃げていくでしょう。カラスの方を見ずにある程度離れた所を通れば、カラスは警戒はしますが逃げることはないでしょう。実際に試してみてほしいです。
カラスがカメラを警戒するというのは、長い筒状のものが猟銃を連想させるからかもしれませんし、カラスをじっと見つめる人間の姿が捕食動物のように見えてしまうからかもしれません。もっとも、レンズ部の小さい小型ビデオカメラでも逃げてしまいますから猟銃説も確信はありません。10mの距離でカメラを構えると、かなり確実に逃げてしまいます。あまり人がいない郊外では、30m離れていてもカメラを構えると逃げる可能性は高いです。
そこで、写真を撮るにはカラスに警戒されないための方法が必要になります。その方法とは、「カラスには興味無いんだよ、というふりをする」ことです。三脚を立てるときは、カラスに背を向けて立てます。カメラを向けるときも、最初は別の方向に向けておいて、次第にカラスの方に向きを変えていきます。ビデオカメラや一部のデジカメのように、液晶ファインダーの向きが変えられるならば、これを横に向けて、自分がカラスの方を直接向かないようにして撮るといいでしょう。
人間を警戒するカラスですが、至近距離で撮ることが可能な状況もあります。それは、カラスに食べ物を与える時、またはハトなどの食べ物を横取りしようと近づいてきた時です。こういうときは食欲が優先するらしく、カメラの有無に関係なく接近できます。顔のアップ写真はこういうときにでもないと撮れないでしょうね。