Vol. 182(2003/7/13)

[今日の観察]動物フィギュアを批評する(後編)

(前回からの続きです)


地球生命紀行クジラフィギュアコレクション(エポック)
原型:不明
評価:B

・企画としてはまずまず。シークレットアイテムのマッコウクジラの「白鯨」、シロナガスクジラの骨格というのは面白いものです。ただ、種類が少なすぎます(シークレット含めて8種類)。クジラは約80種もいるのですから出し惜しみはしてほしくないですね。
・造形は、最低限の所はおさえている印象です。といっても、クジラ・イルカは意外と資料が多いので、これぐらいの造形はできて当然です。過去にも各種立体模型が出ていますから。
・全体に印象は悪くないものの、シロナガスクジラだけはどうもひっかかるものがありました。シロナガスクジラの尾びれの根元はもっと細いと思いますし、胴はもっと細長いはずです。シロナガスクジラの巨大感が伝わってこないんですよねえ。
他のフィギュアの出来がいいのはお手本があったからで、お手本の無いシロナガスクジラでは失敗したのではないか、というのが私の推理です。
このシリーズは「蟹・海老」「サメ・エイ」と続いていますが、どれも私を満足させる造形ではありません。私の推理は当たっていたようです。


シャークアタック(ネコワークス)
原型:ネコワークス
評価:B+

・これは完成品ではなくガレージキットです。つまり、個人メーカーが作っているキットです。製品はバリ(余計な部分)がついたままの未塗装状態で販売されています。そういうものをわざわざここで取り上げるのは、最初見た時にこれは面白い!と直感したからです。未塗装キットを見てそう思ったのです。
・まず、サメという企画がとてもいいです。サメというとジョーズのようなものしか思い浮かばない方が多いのですが、そのフォルムのバリエーションは実に多様です。そして、サメに非常に近い親戚がエイ。サメ・エイは魚類の中でも独特のフォルムを持ったグループなのです。
・造形についても、サメの特徴をきちんとおさえています。
・未完成品なので評価は低めにしています。また、普通のお店には置いてないのは残念です。しかしまあ、これがガレージキットというものなのです。ホームページはこちら。通信販売もあります。
私は全部そろえてます。ただしいまだに塗ってません(^_^;)。


チョコラザウルス(UHA味覚糖)
造形総指揮:松村しのぶ
評価:B

・恐竜以外の古代動物を広く取り上げているのは好感が持てます。大昔の動物というと恐竜ばかりが取り上げられるのですが、これだけがクローズアップされるのは実はバランスが悪いのです。恐竜は歴史上登場した数多くの生物の中のほんの一部なのですから。
・恐竜の模型はたくさんあるようで以外と無いものです。低価格でこれだけのラインアップをそろえたものはこれが初めてではないでしょうか。しかも、造形的なレベルも基準をクリアーしていますから満足度は高くなります。
・ハルキゲニアのような、いざ作ってみると笑っちゃうような動物も入っています。
・造形もシリーズが進むにつれこなれてきた印象があります。


ダイノモデルス(フルタ製菓)
原型:荒木一成
評価:B+

・チョコラサウルスより骨太で、こちらの方が造形は私の好みです。
・種類が少なく、続編が出ないのは非常に残念な製品です。もったいない。


ダイノワールド(カバヤ食品)
原型:ビットラン株式会社
評価:C

・造形が甘い、の一言です。
・制作総指揮はロバート・T・バッカーという恐竜学者なのですが、ちゃんとした指導があったとは思えないひどい出来です。バッカー氏は、主張する学説はさておいて、躍動感のあるイラストが描ける人で、「見せ方」がわかっている人のはずです。「名前だけ借りた」ということなのでしょうか。


番外

動物フィギュア以外の食玩の内、個人的に関心のあるものをついでに紹介しておきます。

私は実は飛行機好きなので、飛行機モノにも注意しています。
まず、がっかりさせられたものが「チョコエッグ 戦闘機」(フルタ製菓)。またフルタ製菓ですよ〜(笑)。ちゃんと作ってほしいですよね。翼がただの平板な板になってしまっていて、これでは飛行機のかっこよさが台無しです。立体物の見せ方というものが全然理解できていません。
これに対し、「ボトビッツ 戦闘機」(ラナ)は1/400という驚異的な小ささにもかかわらず、翼の断面がきれいに再現されています。この細かさには思わずうなってしまいました。
飛行機の模型がほしいならプラモデルを買うのが正当な方法ですが、たいてい1/72スケールなので、けっこうな大きさになります。1/144で出してくれないのかなあ。

また、私は縁起物マニア(?)ですので、「福神根付」(タカラ)も買いましたよ。細かな造形、信じられないほどの微細な塗り表現。これまたうなってしまう完成度です。特に宝船(彩色版)はすばらしい。乗船した神様ひとりひとりが、きっちり造形・塗装してあるのですから。原型作った人もすごいけど、中国工場の塗装職人さん万歳!ですね。
「世界の神話 第2集 仏教神話編」(カバヤ)も面白い製品でした。仏教というと観音様はじめ高位の方々が有名ですが、その下には五大明王とか四天王といった部下がたくさんいるのです。ちょっと見、おっかない方々ばかりが並んでいるのですが、細かい所までちゃんと作り込んであって、しかも彩色してあるのでちゃんとした芸術作品っぽく見えたりするんですよね。
七福神、仏教像どちらにも言えることですが、こういったものの姿形はある程度の共通したフォーマットがあるとはいえ、細かい部分(ポーズ、小道具、彩色など)では製作者の自由度があり、時代や場所によってさまざまなバリエーションが存在します。このことに注意しながら統一感あるラインアップを造形するというのはけっこう大変なことです。そこがうまくいっているのが両製品の質の高さにつながっていると言えます。

他にも単品で気に入ったものだけ(中古で)買っているものもあるのですが、省略します。


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