Vol. 305(2006/2/26)

[今日の事件]「あらいぐまラスカル」と動物商法

「あらいぐまラスカル」(とその原作)について3回にわたって見てきましたが
、なぜこのアニメが問題作なのかがおわかりになったかと思います。アニメがその業界内だけで完結していれば問題はないのですが、それに動物がかかわってくると現実の自然環境にも問題を引き起こしかねないわけで、かなり慎重に扱うべきことなのです。
これはアニメに限った話ではなく、これまでにもいろいろな動物ブームがありいろんな問題を起こしてきました。例えば、タマちゃんレッサーパンダの風太くん、チワワ、虫キング。こういったことについてはいきもの通信でも繰り返し批判してきたことです。動物のことが話題になれば私のような者は仕事が増えてもうかるように思われている人がいるかもしれませんが、実際にはそんなことは決してなく、逆に自然環境の破壊になってしまったり、動物への悪影響になったり、誤解がまん延したりとマイナスの影響の方が多いのです。ちょっと勘弁してほしいですよね。
動物ブームの問題点は、それが商業ベースに乗ること、つまり大量生産によって画一化されたイメージがばらまかれることです。本当は複雑で奥の深いことが非常に単純化されたり、本質から離れたことが意味もなく大げさに語られたりといったことになります。といっても何のことだか想像しにくいでしょうかね。

話をわかりやすくするために、動物ブームの際に現れる現象とその問題点を見ていくことにしましょう。

まず「ペット販売(実物販売)」。
アライグマやチワワ、外国産カブトムシ・クワガタムシがその例です。テレビ番組やCMやゲームで人気が出て、その実物が販売されるということです。アライグマはその後の「アライグマ問題」につながったのは前回書いた通りです。チワワはあの有名なCMで一気に有名になりましたが、その値段が高騰したりしました。また、ちゃんと飼えないのに買ってしまった、という不幸な例も多発しているのではないかと心配です。外国産カブトムシ・クワガタムシは「虫キング」の影響が大きいのですが、それ以前からもマニアの人気がありました。これも外来種問題が現実的な問題になりつつありますし、原産地での乱獲や自然破壊につながっている懸念もあります。
実物販売というのは、それなりに多くの個体数をさばかなければもうからないという構図があります。しかし、動物は工業製品のように大量生産できるものではありません。そのため入手や繁殖で多かれ少なかれ無理なことをやっている可能性が高いのです。

次は「キャラクター商品化」。
実物がほしくても金銭的理由や家で飼えない、飼うのが面倒などなどといった理由で断念する人はかなり多いでしょう。そういう人たちにとってはキャラクター商品=グッズというのは欲望を満たしてくれる代替品になります。また、ただ単に「はやっているから」という軽い理由でキャラクター商品を買う人はさらに多いでしょう。
キャラクター商品は実害は無いように見えますが、その流通量が非常に大きなものになって、画一化されたイメージがばらまかれてしまうという問題があります。例えば「あらいぐまラスカル」やチワワの場合は、「かわいい」という極端に圧縮されたイメージがひとり歩きをしてしまっていると言えるでしょう。アライグマやチワワの生態、生活などといった情報はすっぽりと消えてしまっているのです。これでは自然保護にも動物愛護にも発展のしようがありません。

そして「便乗商法」。
まあ、実物販売もキャラクター商品もだいたいが便乗商品なわけですが。オフィシャルな(製作側が認めた)商品は「キャラクター商品」といっていいでしょうが、それ以外の便乗商品も多く出現するものです。ゲームなんかではよく似たモチーフのものが登場したりします。レッサーパンダの時は、「こっちの動物園にも」とか「こんな動物も立った」とか「こっちの方がもっとすごい」とか、様々なバリエーションが後に続きました。こういうのが「便乗商法」です。これは場合によっては「まがい物、パチモン」なんかが登場します。
経済学的には「波及効果による経済的効果がある」ということで歓迎すべき現象かもしれません。しかし、そのマイナス部分もあるのだということはもう言うまでもないでしょう。


このように動物商法というものにはどこかしらうさんくさいものを私は感じてしまうのです。もちろんこれらすべてを否定するものではありません。ですが、情報発信側は変な方向にものごとが流れてしまわないよう気をつける必要があると思うのです。もっとも、大きな流れになってしまうとそれをコントロールすることは非常に難しいものですが…。

情報を消費する側も、「かわいい」とか「流行だから」といった表面的な現象に惑わされることなく、冷静に見つめてください。


などと書いていると、また新たなバッド・ニュースが!!
ラスカルが登場するアニメ番組が4月から開始されるそうです。

ぽかぽか森のラスカル

これは原作やアニメの「ラスカル」とはまったく関係のない、オリジナル・アニメーション作品のようです。つまり「ラスカル」の看板を使ってまたひともうけしよう、ということですよね。
日本にはアライグマ問題が存在し、外来生物法でアライグマは輸入も飼育もできないようになったばかりというのに、今さらラスカルを再利用するなんて、センスの無さ丸出しです。こんな商売をしているところは自然保護にまったく理解がないのだ、と私は断定します。


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