Vol. 255(2005/1/23)

[今日の事件]東京都、ハト対策に乗り出す

まずはギター侍・波田陽区風に…

♪俺は、いーしーはーらー慎太郎。泣く子も黙る東京都の都知事だぜ。俺はカラスが大嫌い。だからカラスをたくさんたくさん退治した。そしたら今度はハトが増えすぎて、お次はハト対策に乗りだします……って言うじゃな〜い。
……でも、あなたの言っていることは既に4年も前に環境省が言ったことですからー!!…残念!
ハトを退治するあなたはやっぱりタカ派!斬り!


と、お笑いはここまでにして、まずは東京都の報道資料からご覧ください。

ハト対策の実施について〜エサやり防止キャンペーン〜

ついでに都知事記者会見も。後半の質疑応答のところでちょっと触れられています。

石原知事定例記者会見録 2005年1月14日

ハトといえば平和の象徴、それを減らそうというのですから世の動物好きの方の中には怒りだす人がいるかもしれません。人間を襲う(とよく報道される)カラスを退治するのはいいが、ハトは無害だろ!と思う方もまた多いでしょう。しかし、ハトといえども害鳥の側面を持つ鳥なのです。
ところでここまで「ハト」と言ってきましたが、今回問題になっているのは正確には「ドバト」という種です。街中や神社、公園によくいるあのハトのことです。
ドバトの危険性のひとつは、オウム病、クリプトコッカス症など感染症や、羽毛などに対するアレルギー症状などが挙げられます。もっとも、これらの危険性はドバトに限らずあらゆる鳥類にも言えることです。ですが、ドバトが特に問題になるのは、人間と接触する機会が多いこと、人間の生活圏に非常に多く生息することといった理由があるためで、他の鳥よりもはるかにリスクが高いのです。
ドバトの危険性のもうひとつは、フン害です。ドバトは集団で行動するため、ある特定の場所にフンが集中することがあります。そのため、建築物が汚されたり、悪臭に悩まされたりという問題が起こるのです。

私は東京都のカラス対策に対して手厳しく批判してきましたが、今回のドバト対策については特に批判はしません。私は以前から「野生動物へのエサやりはやめよう!」と言ってきましたから。今ごろドバト対策なんて遅過ぎ!なのです。上に書いたように、「ドバトへのエサやりをやめよう」というのは4年も前に環境省が言っていることをなぞっているだけなのですから。「石原知事がまた何か新しいことをやってるぞ」と思われた方がいるかもしれませんが、実はそうではなくて「今ごろになって環境省と同じことを言っている」に過ぎないのです。だまされないように!
さらに文献を調べてみると、1979年に山階鳥類研究所による「ドバト害防除に関する基礎的研究」という論文を発見しました。書かれた時代は古いのですが、現在でも十分通用する内容です。この論文にはドバト対策の方法についても書かれています。環境省の対策もこの論文と同じ方向性ですし、研究者・専門家の提唱する対策もこれと変わらないものでしょう。この論文はドバトの生態や生息数増加の理由なども書かれています。ドバト問題に興味がある方にはご一読をおすすめします。

しかし、東京都のドバト対策のその内容は期待外れの貧弱なものであることはやはり指摘しておかなければなりません。というのも対策の中身というのが、場所は上野公園だけ、やることはチラシを配るだけなのですから。とりあえず手軽にできることからやってみましょう〜的なノリなんですよね。この程度のことで都知事の評価が上がってはたまりません。
また、ドバト対策はカラス対策と比べると全然甘いものです。カラスはトラップまで作って捕獲したのに、ドバト対策は「注意を喚起する」だけです。それぞれにリスクがある害鳥なのに、なんでこんなに差があるのでしょうか。本当にドバトを問題にするならば捕獲・殺処分もするべきでしょう。いや、逆にカラス対策もトラップなどという方法を使わない穏やかな対策方法もあったはずなのです。種類によって効果的な方法をやっているのではなく、場当たり的に対策を立てているというのが本当のところではないでしょうか。
東京都の動物行政を見ていると、個別の問題ばかりに目が向いていて、マクロな視点に欠けているように思われます。例えば、ドバトにエサをやるのを禁止するのならば、カモ類にエサをやるのも禁止すべきでしょう。カモ類は鳥インフルエンザの媒介動物である可能性が非常に高いのです。エサを与えることによりカモ類の生息密度が極端に高くなり、感染症が爆発的に広がるリスクもあるのです。また、他にも駆除すべき動物、保護すべき動物はたくさんあります。そういったものをひっくるめての動物行政の全体が見えてこないのです。
もっとも、動物行政に力が入っていないのは他の道府県でも似たようなものかもしれません。専門知識のないお役所がやるためにこうなってしまうのです。しかも専門家の意見をちゃんと聞かないのでお粗末な対策にしかならないのです。お願いですから専門家の意見をもっと尊重していただきたいものです。

東京都のドバト対策に話を戻すと、このキャンペーンはうまくいけば一定の結果が得られるのは間違いないと思われます。そうすれば、次は都内各所の公園でも同じことをやってほしいものです。野生動物にエサをやることは、自然界のバランスを崩すことです。エサやり禁止は動物愛護に反するように見えて、実は自然保護の重要な方法なのです。エサやりをやめるように説得するのはかなり難しいこととは思います。しかし、自然環境保護、人間生活環境の保全のためにもやらなければならない政策なのです。読者の皆様もどうぞご協力ください。


(ギター侍・波田陽区の続き)

「いきもの通信」で、一番アクセスが多い記事は「ハトの交尾」なんです……切腹!!


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