Vol. 69(2000/11/19)

[動物写真を撮る]動物写真に適したレンズとは?

レンズ交換が可能な一眼レフカメラの利点の一つは、目的に応じたレンズを選べることです。レンズはカメラのメーカーからだけでなくレンズ専門のメーカーからも発売されており、多種多様な選択が可能になっています。その中から動物写真に適したレンズを選ばなければならないのですが、まずはレンズにはどのような種類があるかを知っておく必要があるでしょう。

上の図はレンズの焦点距離によるレンズの分類です。「焦点距離」についての説明はしませんが、レンズ選びではまず最初に注目しなければならない数字です。上図でもわかるように、焦点距離の値が大きいほど望遠の性能がよくなります。逆に焦点距離の値が小さいと遠くのものを写すには適しませんが、広い範囲を写すことができるので風景写真には好都合です。

35mm〜100mmぐらいの範囲は「標準域」と呼ばれ、コンパクトカメラなどの一般的なカメラのズームレンズでもカバーしている範囲です。人物写真や風景写真など日常の写真撮影に使用する領域です。
35mm以下は「広角」と呼ばれ、広い範囲を写すのに適しています。この数値がさらに下がると「超広角」あるいは「魚眼」という特殊なレンズになります。
100mmを超える領域は「望遠」となります。その名の通り遠くのものを写すためのレンズです。300mmを超えると「超望遠」と呼ばれるようになります。遠くにいる動物を撮るには望遠性能に優れた超望遠レンズを使えばいいことは明らかです。しかし、超望遠レンズは価格も非常に高く、重量も格段に重くなりますので、今回は選定の対象外とします。

望遠レンズ

それでは、いよいよレンズ選びに入りますが、まずは動物写真には欠かせない望遠レンズから始めましょう。望遠レンズにはズーム機能があるズームレンズ、その機能がない単焦点レンズがありますが、最初はいろいろな場面で使えるズームレンズを選ぶことにしましょう。単焦点レンズにも利点はあるのですが、もう少し慣れて撮影目的がはっきりしてから買うのがいいと思います。
レンズのカタログを見ると、70mm程度から300mmまでをカバーする望遠ズームレンズがあります。これなら5万円前後かそれ以下で、手ごろな値段です。
そこで選んだのは

SIGMA社 APO MACRO SUPER 70-300mm F4-5.6

です。このレンズはマクロ機能、つまり最短撮影距離を短くできる機能もあり、95cmまで近づくことができます。

しかし、望遠レンズには欠点もありです。それは振動や手ブレに弱いということです。遠くの小さな被写体を望遠レンズで狙うと、ちょっとカメラがゆれただけでも被写体が大きくずれ、ぶれた写真になってしまうのです。振動・手振れを極力避けるためには三脚を使うのが常道ですが、300mmレンズは三脚を使わず手持ちで使うことが多いレンズでしょう。また三脚もいつも使えるわけではありません。
振動・手振れを避ける方法は三脚以外にもいくつかありますが、そのひとつは手振れ補正機能を持つレンズを使うというものです。ただし、この機能はどのレンズにもある機能ではなく、今のところキヤノン社の一部のレンズに限られた機能なのです。この機能は「イメージスタビライザー(IS)」と呼ばれ、この機能を持つレンズは価格もやや高くなっています。キヤノンのカメラにしか使えないので、カメラを選ぶときには注意してください。300mmまでカバーする望遠ズームレンズは

キヤノン社 EF75-300mm F4-5.6 IS USM

です。前掲のレンズよりも高価なので、買うには迷うかもしれません。実際に私はこれを使っていますが、それなりに効果はあると言えるレンズです。ただ、最初からこれを使っていると手振れ補正機能のありがたみはわかりにくいかもしれません。手振れ補正機能はOFFにすることもできますので、買ったときにはその効果を実際に試してみるといいでしょう

標準ズームレンズ

そしてもう1つ、標準域をカバーする標準ズームレンズも購入しましょう。望遠でないと動物写真には役に立たないのでは?と思われるかもしれませんが、昆虫のような小動物を撮るときには標準域を使うことがほとんどになります。それにいつもいつも動物ばかりを撮るわけではないでしょう。時には風景を撮ったり、人物を撮ったりもするでしょう。そういった普通の用途のためにも標準ズームレンズは持っていた方がいいのです。しかし、ここは動物写真を目的にしていますのでそれなりに役に立つレンズを選ぶことにしましょう。
それは「マクロ」機能を持つレンズです。「マクロ」とは写真の世界では「近接撮影」のこと、つまり最短撮影距離が短いレンズのことです。レンズのカタログを見ていただくとわかるのですが、標準ズームレンズの最短撮影距離は50cm程度です。しかしマクロ機能を持つレンズは最短撮影距離がその半分ぐらいまで縮まります。これは昆虫のような極めて小さい動物を撮影するときに有利になります(ズーム機能のない単焦点のレンズならさらに接近できますが、ここではズーム機能を持つレンズを選んでますので省略します)。
そこで選んだのが、

SIGMA社 MINI ZOOM MACRO 28-80mm F3.5-5.6

です。最短撮影距離は24cm。超アップはできませんが、昆虫写真には手頃なレンズです。

最近は28mm〜300mmという10倍のズームができるレンズもあります。これなら1本で標準域から望遠までカバーできるので万能のように思えますが、私はすすめません。というのも、このようなレンズでは望遠側のF値が高くなってしまうからです。F値とは、レンズの明るさを表す数値で、製品カタログには必ず記されてます。この値が小さいほど「明るいレンズ」になります。明るい、ということは暗めの場所でも撮影がやりやすいということです。動物写真の条件のひとつに「暗い」という項目があったのを思い出してください。動物写真はいつも明るい場所で撮れるわけではありません。そのためにはできるだけ明るいレンズを選ぶべきで、10倍ズームレンズでは不利になるのです。


次回は「ぼけない・ぶれない撮影方法」の予定です。

連載第1回 Vol. 66 動物写真は極限の写真/カメラの選び方

連載第3回 Vol. 77 ぼけない・ぶれない撮影方法

連載第4回 Vol. 82 デジタルカメラは動物写真に使えるか?

追加 Vol. 104(2001/9/30) 続・デジタルカメラは動物写真に使えるか? FinePix6900Zを使ってみて


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