Vol. 82(2001/4/1)

[動物写真を撮る]デジタルカメラは動物写真に使えるか?

現在、カメラの世界はアナログカメラとデジタルカメラが拮抗している状態だそうです。今年はついにデジタルカメラの市場がアナログカメラを越えることになりそうで、本格的なデジカメ時代が到来することになります。
今回は「動物写真を撮影する」という立場からデジカメの利点と問題点を見ていくことにしましょう。まずは利点から。

フィルムの現像が不要

カメラを使う上で、この利点は非常に大きいものです。アナログカメラの場合、フィルムの現像のためにお店に行き、少なくとも1日待つことになります。この手間が意外と面倒なものなのです。デジカメなら家に帰ってパソコンにつなげば、すぐに画像を見ることができます。撮ったばかりで記憶も新しいので、写真の出来不出来の検討もやりやすくなります。
さらにフィルムを買いに行く手間、あるいは買いだめする手間も省けますので、この点でも時間の節約になります。
また、コスト的にもフィルム代+現像代が要らなくなります。たくさん写真を撮る人にはかなりお得と言えるでしょう。

即デジタルデータになる

デジカメならこれは当然のことです。アナログカメラの場合はフィルムをPhotoCDにしたり、フィルムスキャナーを使ってデジタルデータにします。私はフィルムスキャナーを使っているのですが、36コマをスキャンするのに90分もかかるのが難点です。いずれにせよお金も手間もかかってしまうのてす。

少々暗くても撮影できる

フィルムと比べると、デジカメのCCD(撮像素子)はより少ない光量でも撮影することができます。つまり、少し暗いところでも撮影できるのです。雨の日、夕暮れ、暗い森の中--動物写真の撮影は自然環境の中で行うため、いつも光量が十分にあるとは限りません。アナログカメラではあきらめていたような場合でも、デジカメなら撮影可能になることもあるのです。

感度を自由に変えられる

フィルムを選ぶときに迷うのは、どの感度(ISO)にするかということです。シャッター速度を確保するため高感度フィルムにするか、画質を優先するために低感度フィルムにするか。実際の撮影情況も予想しければなりません。フィルムは、一度カメラに入れると途中で感度の変更は基本的にはできません。撮影の途中で光量が変化しても、最後まで使いきらない限り、フィルムの交換はできないのです。(プロは、複数のカメラを用意して、それぞれに感度の異なるフィルムをセットして対応することもあるらしい。)
デジカメはそういう制約無しにいつでも感度を変更できます。情況に応じて、より適切な撮影ができることになります。

近接撮影がやりやすい

昆虫や花を撮る場合、被写体にかなり近づく必要があります。しかし、レンズには最短撮影距離があり、それ以上接近するとピントが合わなくなります。デジカメはこの最短撮影距離がアナログカメラよりも短いのが普通です。つまり、デジカメは近接撮影に向いているのです。

しかし、デジカメも利点ばかりではありません。以下のような問題点もあります。

画素数が足りない

特別な使い方をしなければ300万画素あれば十分なはずです。しかし、プロレベルだと話は別です。例えば、大きめの写真集の見開き写真、あるいはポスターなどに印刷することを考えると、300万画素では足りないのです。では何万画素あれば十分なのかというと、その妥協点を見つけるのはかなり困難です。というのも、使用目的によって必要な画素数が違ってくるからです。
この問題は撮影者の考え方で答えが違ってくるものです。格段に画素数が向上しない限り、アナログ派は根強く残ることでしょう。

液晶モニターはピントの確認がしづらい

厳密に写真を撮ろうとする場合、このことはかなり問題です。オートフォーカスの時は、デジカメを信じてシャッターを押すしかありません。つらいのはマニュアルフォーカスの時で、ピントが合っているのかいないのか、何度も微調整することになります。
ピントが確認しづらい原因は液晶モニターの画素数にあります。カタログを見るとわかるのですが、液晶モニターの画素数は10万画素前後が多いはずです。画素数がもっと多ければピントの確認もやりやすくなるのでしょうが、そうすると価格がはねあがることになってしまうでしょう。

多少の欠点はあるものの、動物写真という点から見てもデジカメは十分使えるレベルになっていると思います。まだカメラを持っていないならば、アナログカメラではなく、デジタルカメラを選択することを私はすすめます。

ついでに具体的な製品を挙げてみようかとも思いましたが、デジカメは技術進歩が速いので、今特定製品を紹介してもすぐに意味をなさなくなってしまいます。そこで、動物写真向けデジカメ購入のためのポイントを列記しておくことにします。

・光学10倍ズーム機能(10倍ズームができなくても、テレコンバージョンレンズが使用できることもあるので、それも確認しておきたい。ただし、昆虫を撮るだけなら5倍ズーム程度でもいい)
・画素数は多いほどいい
・撮影感度を切り替えられる(少なくともISO100〜400に対応しているものを)
・シャッター速度優先モードがあるもの

これらの機能を持つデジカメは、どちらかといえばやや高価な部類になるでしょう。しかし動物写真の特殊性を考えるとこれらのポイントははずせません。現在この条件に合うデジカメはほんの数種類しかありません。


不定期シリーズ「動物写真を撮る」は今回で終了です。

連載第1回 Vol. 66 動物写真は極限の写真/カメラの選び方

連載第2回 Vol. 69 動物写真に適したレンズとは?

連載第3回 Vol. 77 ぼけない・ぶれない撮影方法

追加 Vol. 104(2001/9/30) 続・デジタルカメラは動物写真に使えるか? FinePix6900Zを使ってみて


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