この夏、ようやく私もデジカメを買いました。といっても貧乏なので高価な物は買えません。実売価格で10万円以下、画素数が多く、動物写真にも使える物を、ということで選んだのが富士写真フィルムのFinePix6900Zです。このデジカメの主な仕様は、
・記録画素数603万(CCD330万画素、ハニカム配列)
・光学6倍ズーム
・一眼(カラー液晶ファインダー)
といったところです。10万円以下のデジカメとしては、最も高性能な部類に入る機種です。今回はこのFinePix6900Zの使用感とともに、デジカメの利点・欠点を改めて考察してみたいと思います。利点
・現像が不要
デジカメを実際に使ってみて、最大の利点はやはりこれです。フィルムの購入、現像に出して、それを受けとりに行くという手間が省けるだけでもかなり助かります。そして、フィルムのコストがかからないので、これまでやらなかったようなことをいろいろ試すことができます。例えば、私は今まで夜間の撮影をしませんでした。撮影のノウハウや機材の不足などが理由です。しかも、撮影の結果は現像しないとわからないというのでは面倒すぎるのです。これがデジカメの場合、とりあえずチャレンジしてみて、その場で撮影結果を確認、問題があればすぐにやりなおすということができるのです。おかげで今年はアブラゼミの羽化の写真をたくさん撮ることができました。欠点
・ファインダーが見づらく、ピントの確認が難しい
FinePix6900Zのファインダーはカラー液晶なのですが、これが意外と見づらく、ピントが合っているかどうかわかりづらいものです。特に、小さく見えるものを撮るときに、ピントが被写体に合っているのかどうかよくわからないのです。
この製品に限らず、デジカメのカラー液晶ファインダーはどれも解像度が低く見づらいものです。ビデオカメラのファインダーの性能も同様に不満があるのですが、デジカメのファインダーはそれよりもさらに性能が劣るものです。せめてビデオカメラのファインダー並みになってほしいものです。・AF(オートフォーカス)が遅い
まさかこんなに遅いとは思っていませんでした。AFが遅いということは、動物のように動く被写体は苦手ということなのです。動物写真にとってこれはかなり不利な点です。しかもカモ類のようにゆっくり泳いでいる被写体でもAFが追いつきません。これは困りました。また、AFの時に画像が一時停止してしまうのも使いにくい点です。これら「ファインダーが見づらい」「AFが遅い」の2点は、FinePix6900Zに限らず、20万円以下のデジカメには共通の問題で、現状では仕方のないことではあります。デジカメ・メーカーも、今後はこのあたりを改良してくるでしょうから、数年で解決されるかもしれません。
テレコン、マクロレンズ
・テレコン
レイノックスのSTF-1800(1.8倍望遠)を使用しています。画像周辺部で色ずれがあるのが気になるのですが、印刷時にはあまり気になりません。性能的には問題ないのですが、AFが遅いために使う場面が少ないのが残念です。・マクロ
レイノックスのMSF-4900(2倍と4倍の2本セット)を使用しています。使っているのは2倍レンズの方です。トンボを撮るにはこれぐらいがちょうどいいのです。もっと小さい被写体なら4倍レンズがいいでしょう。どちらも性能的には問題ありません。ただ、マクロレンズ一般の傾向として、ピントが合う範囲が狭いという問題があります。ファインダーでピントがしっかり確認できればいいのですが、前述のようにそれがあてにできません。多分ピントが合っているだろう、と思って撮ってみると大はずれだったという失敗多数です。もう少し練習すれば克服できるとは思いますが、こういうところでファインダーの性能の悪さに泣かされるとは思いませんでした。その他、FinePix6900Z特有のこと
・少々露出アンダーでも大丈夫?
新しいカメラに慣れないうちはうっかり露出オーバー/アンダー表示を見逃してしまったりするのですが、そのうっかり撮った露出アンダーの画像が意外と問題無い出来だったりするのです。アナログカメラを使う時に、あえて露出アンダーで撮ることもあるのですが、普通はあまりしません。デジカメならフィルム代の心配がいらないので、どこまで露出アンダーにしても大丈夫なのか、いろいろと試しています。露出アンダーにならないぎりぎりの状態から1段階シャッター速度を上げるくらいなら問題ない、というのが現在の結論です。
・画像がシャープ
FinePix6900Zの画像は驚くほど輪郭がはっきりでます。シャープネスは「ハード」「ノーマル」「ソフト」の3段階が設定でいるのですが、「ノーマル」で十分にシャープです。「ノーマル」と「ソフト」の間ぐらいに設定できればもっといいのですが。
・画像の完成度が高くて後加工が難しい
FinePix6900Zの画像はとてもきれいで満足のできるものです。何も画像処理せずにそのままプリンタで印刷して十分満足できるレベルです。しかし逆に言うと、色調補正など画像の加工が難しく、微調整がやりにくいということでもあります。慣れれば有効な加工法もわかってくるとは思いますが、私には少々面倒なことでもあります。ただし普通のユーザーにはこの方がいいのだとは思います。
・600万画素
600万画素あればトリミングをしても十分な画素数を確保できます。動物は近づけない場合が多いので、これはありがたいことです。総評
性能はおおむね満足できます。しかし、「ファインダーが見づらい」「AFが遅い」という難点は動物写真の撮影には決定的に不利です。ただし、これは20万円以下のデジカメには共通の問題なので、仕方がないことでもあります。キヤノンEOS D30やニコンD1のような30万円以上の高性能デジカメならばこれらの問題もありません。きちんとした動物写真を撮るなら、そのような機種か、アナログの一眼レフカメラを買う方がいいでしょう。
現状のデジカメは通常の使用においてはほぼ完成の域に到達していると言っていいでしょう。ただし、動物写真のような「極限の写真」を撮るには低価格のデジカメはまだ適していないということです。使用の現状
では、FinePix6900Zが役に立たないかというとそんなことはありません。動物はいつも動いているわけではありませんし、AFもある程度信頼できるので、実際に使える場面も多いのです。
もともと、FinePix6900Zはサブカメラとして使う予定でしたので十分に役立っているといえるでしょう。現在はアナログカメラと併用していますが、その分担は次のようになっています。・EOS5(アナログ)
レンズ:75-300mm望遠
主に鳥、遠くの昆虫の撮影に使用・FinePix6900Z(デジタル)
レンズ:2倍マクロレンズ(ワンタッチで取り外し可能)
昆虫(近くの、あまり動かない昆虫に限られる)の撮影に使用。その他、一般的なスナップ、風景写真なども撮影。このように限定的な使い方ならデジカメもとても有効です。しかし何度も言いますが、「ファインダーが見づらい」「AFが遅い」という欠点さえ克服できれば動物写真にも十分使えるだけに現在のデジカメの性能は非常に残念です。これらがはやく改良されることを期待したいと思います。
連載第1回 Vol. 66 動物写真は極限の写真/カメラの選び方
連載第2回 Vol. 69 動物写真に適したレンズとは?
連載第3回 Vol. 77 ぼけない・ぶれない撮影方法