久しぶりにカイツブリの話です。前回から何もなかったわけではなく、変化がいろいろありました。
今回は地図付きでの説明となります。I公園の池はすべてつながっている1つの池なのですが、ここでは橋で区切られた3つの区域に便宜上分けています。それぞれ東池、西池、弁天池と呼ぶことにします。カイツブリはなわばりを持っており、ここI公園ではなわばりがこれら3つの区域に分かれているからです。位置については図をご覧ください。[図1]は前回10月時点での生息数です。若鳥は2羽しか確認できないこともありました。西池の方に行っていたのかもしれません。
11月 [図2]
東池のカイツブリの親の姿が2羽とも消えました。見逃したのかとも思いましたが、その後もずっと姿が見えないため、本当にいなくなっているのだと判断しました。では、どこへ行ったのか? カイツブリの飛行能力がどれほどのものかはわかりませんが、どこか別の場所へ移動したと思われます。12月中旬 [図3]
東池のカイツブリの子供のうち2羽はつがいになったようです。水底の落ち葉を渡すような動作をしたり、ケリリリリリと鳴き交わしたりしていました。落ち葉や木の枝は巣の材料でもあります。今すぐ巣を作るわけではありませんが、恋の小道具にはふさわしいものといえるでしょう。
このころから恋の季節が始まります。東池と弁天池の境界で、隣のなわばりのカイツブリと鳴き交わしている(追い払うのではなく!)姿を見ることもありました。また、下旬頃にはこれまでより少なくとも1羽増えているとみられることもありました。1人で広い池を見て回るので、個体数の確認も容易ではないのがつらいのですが、実際に個体数が増えているとすると、外部から飛来したとしか考えられません。カイツブリはやはり中長距離の移動を行うことができるのだと推測できます。1月上旬
東池のカイツブリの子供たちも完全に成鳥の羽根の色になっていました。年末までは、くちばしも羽毛も薄い色だったので区別は可能だったのですが[写真]、もう完全に成鳥になっていました。つがいの形成が性成熟をうながし、大人の羽毛への変化を引き起こしたようにも見えますが、実際はどうなのでしょうか。
東池のつがいの求愛行動は引き続き目撃できました。東池のもう1羽の若鳥はつがいの1羽に追い立てられていました(その逆ではないと思う。個体識別、雌雄識別ができないので断言できないが)。1月下旬
また異変がありました。ずっと空き家状態だった西池にカイツブリのつがいがいました。東池も1羽増え、弁天池も1羽増えています。やはり外部からの飛来はあるようです。
翌週は西池に1つがい、東池に2つがい、弁天池に1つがいという状態になりました。その後、2月から3月中旬までは西池に1つがい、東池に1つがいと1羽、弁天池に1つがいという状態で安定しました。
3月下旬からは西池には1羽しか確認できません。もう1羽いていいはずなのですが、詳細は不明です。[図4]4月上旬
東池の昨年と同じ場所に設置された木の土台に、今年もカイツブリは巣を作りました。最初は落ち葉をちょっとだけ乗せている程度だったのが、1週間でちゃんとした巣を完成させ、卵を3個産んでいるのを確認できました。順調に行けば、月末には孵化するでしょう。
これで昨年の観察から1サイクル巡ったことになります。こうしてずっと追っていくと、カイツブリがこの場所を出入りしているらしいことがわかります。ただ、私自身、カイツブリが50cmよりも高く飛んでいるところを見たことがありません。飛行能力は確かにあるのですが、長距離移動向きの鳥とは思えません。誰かカイツブリの研究をしている人っていないのでしょうか。
カイツブリは陸に上がることはなく、水面上でだけ活動し、はっきりとしたなわばりを持ち定住するため、観察しやすい動物だといえます。産卵〜子育ての過程の観察もできるなど、鳥の生活全般を見ることができます。定点観察の対象にはちょうどいいのではないでしょうか。学校などでの自然観察の題材にもなると思います。
春は産卵の季節。近所にある程度の広さがある池や川がありましたら、カイツブリを探してみてください。
Vol. 58(2000/8/27) カイツブリ子育て日記 その1
Vol. 65(2000/10/22) カイツブリ子育て日記 その2
Vol. 93(2001/7/1) [今日のいきもの]カイツブリ/カモの子供ではありません!