Vol. 310(2006/4/2)

[OPINION]誰でもできる、環境問題に貢献する方法

「環境問題」というと今では誰もが知っていることになりました。しかし、それが何を指しているかとなると、人によってとらえ方は違ってきます。ある日とは地球温暖化と言い、ある人はエネルギー問題だと言い、またある人はリサイクルだと言い…。答えがばらばらになるのは、環境問題が非常に多岐にわたる内容を含んでいるためです。そのため全体を把握することが非常に難しくなり、わかりにくくなってしまっている傾向があります。
これについて私は、動物を通して環境問題を見ればわかりやすくなるのではないかという提案をしたことがあります(「Vol.120[OPINION]動物問題から環境問題を見る」)。つまり「動物が暮らしやすい環境は人間も暮らしやすい環境である」と考えると環境問題もわかりやすくなるのではないか、ということです。

今回はその話の続きのようなものです。
環境問題に何か少しでもいいから貢献したいと考えている人は少なくないことでしょう。では何をするか? ゴミの分別。リサイクル。クールビズ。省エネ製品の購入。室内温度の調整。などなど。なるほど、確かに意味のある貢献です。でもなんとなく手ごたえがないというか、貢献の度合いがわからないというか、そういう気持ちにもなってきそうです。そう感じるのはおそらく結果が目に見えるものではないからでしょう。具体的な成果が得られないようでは長続きさせるのはなかなか難しいのではないでしょうか。
今回私が提案したいのは、成果を実感できる環境問題への貢献の方法です。それは「身近な自然を守ること」です。身近な自然とは、あなたが住んでいる土地の自然のことです。こう書くとすぐに「都会には自然なんか無い!」という反論が出てくるのですが、それはただの思い込みに過ぎないことはこの「いきもの通信」や拙著でも繰り返し言ってきたことです。東京のような都会にもタヌキが、コウモリが、ヒキガエルが普通に生息しています。野鳥も来ます。トンボもいます。セミもいます。それは小さな自然=リトルネイチャーではありますが、それでも立派な自然であることにかわりはありません。
まずはこのような身近な自然にどんな動物がいるのか調べてみてください。昆虫などは出現時期が限定される種類も少なくありませんし、鳥にもツバメやカモ類のような渡り鳥は特定の時期しか見られません。そのため、観察には少なくとも1年をかける必要があります(1回歩いただけではすべてを把握できません)。少々大変なことですが、そうやって観察できた動物をまとめてみると、小さな自然の中でも生態系が成り立っているのが理解できるでしょう。
これがどう環境問題に貢献しているのかわからない? そうですね、この段階ではまだ「貢献している」とは言えないかもしれません。しかし、ここで気づいてほしいのです。あなたの身近な自然に生息するたくさんの動物や植物たち、それが「財産」であるということに。これらの生物は経済的には大した価値は持たないでしょう。でも、そのすべてが消えてしまったらどうでしょう。それでもかまわないという人もいるでしょうが、たいていの人は失うのは惜しいと考えるでしょう。経済的な価値は無くても、人間が必要とするならばそれは立派な「財産」なのです。
次にすべきことはもうおわかりでしょう。その自然を守ること、そして動物たちがより暮らしやすいように自然環境を整えること。これこそが環境問題への貢献なのです。小さな自然なんかあってもなくても同じ…とは考えないでください。ちょっとした自然が存在するだけでも生活環境はぐっと良くなります。これは誰でも実感できることでしょう。ささやかではありますが、多くの人が参加すればするほど、より多くの場所で自然環境が守られることになります。
地域の自然を知ることは、別の効用ももたらします。それは他の地域の自然と比較ができるようになることです。普通、「アマゾンの熱帯雨林」「アフリカのサバンナ」といっても、それがなんとなくすごいということは感じても、どこがどうすごいのかまではなかなか理解できないものです。でも身近な自然と比べることができれば、熱帯雨林やサバンナといった大自然がいかにすばらしいものであるか、その貴重さがよくわかるでしょう。

環境問題というと、何か遠大なもの、実感が持ちにくいものと思われがちです。しかし、身近な自然を知ること、それを守ることならば、誰でも簡単に参加でき、実感も持てるのではないでしょうか。
もちろんこの方法が唯一正しいものではありません。でも、このようなアプローチにも一考の価値はあると私は考えるのです。


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