Vol. 322(2006/6/25)

[今日のテレビ&ゲーム]ムシキングとか恐竜キングとかのこと

ちょっと古い話になってしまいますが、アニメ「甲虫王者ムシキング」は3月で完了しました。まさか1年間も続くとは思いませんでしたよ。私は最初からずっと視聴していましたが、その感想はというと「1年間我慢して見続けるのがつらかった」ほどのつまらなさでした。ずばり言うと、物語が単調。その一方で仲間になったり裏切ったりといったことが頻繁で誰が敵で味方なのかわかりにくいのです。番組の売り物だった甲虫のバトル(3DCGなので迫力はある)も毎回繰り返されると飽きてしまいます。超昆虫的な技を繰り出されても、見慣れてしまえば飽きますよ。この物語は実はSFっぽい世界設定だった、ということが途中から明らかになりますが、これもまあアニメにはよくあるような設定で、新鮮味はありませんでした。
とにかく、番組はあまりにもつまらなくて批評にも値しないのでこれ以上書きません。ただ、ムシキング関連商法には今でも注目していますので一応書き残しておきます。

ところで、現在ムシキングを押しのけて大にぎわいなのが「オシャレ魔女ラブandベリー」です。簡単に言うと女の子向けムシキングというところなんですが、テレビなどでも報道されたのでご存知の方も多いでしょう。あるいは子どもがはまっているご家庭もあるかもしれません。ご同情申しあげます。「ラブ&ベリー」もキャラクター商品の商売が加熱しているのはムシキングと同じだよなーと思いつつも、動物とは関係ない世界のことですので、これ以上あれこれ言うのはやめておきます。

ムシキングもラブ&ベリーもセガのビジネスなんですが、これらの人気の影に隠れてしまっているのが同じセガの「古代王者恐竜キング」です。これはどういうものかというと、ムシキングの恐竜版。以上(笑)。わかりやすいですね。これの類似品にタイトーの「ダイノキングバトル」というものがあり、セガとタイトーとの間でもめ事もあったりしましたが、結局和解したんでしたっけ。
ただ、恐竜キングもダイノキングバトルも今現在大売れしているという話は聞きません。まだ日が浅いためもあるのでしょうが、私の予想ではおそらくムシキングほどの成功にはならないだろうと考えています。世間一般では「恐竜ものは売れる」と思われているようですがそれは間違いです。これまで恐竜もので大ヒットしたものはほとんどありません。「ジュラシックパーク」は映画と原作本は大当たりしましたが、それ以上の波及効果はありませんでした。

なぜ恐竜ものが売れないのかについては以前にも書きましたが、理由はよくわかりません。今回はムシキングと比較して考えてみましょう。
昆虫と恐竜の違い、それは「現物があるかないか」ということでしょう。昆虫の場合は金さえあれば本物を展示したり売ったりすることが可能です。一部の昆虫の輸入は違法になる場合もありますが、それでも標本(死体)ならばそのような問題もありません。
一方の恐竜というと、本物はどんなにがんばっても入手できません。化石があるって? 化石は骨でしかなく、本物ではありません(正確に言うと、化石とは骨が鉱物に置き換わっているものですので本物の骨ですらないのです)。また、全身の骨格が完全に掘り出されることはまれで、一部分だけが断片的に発掘されるということがほとんどです。部分的な骨だけを見てその生きている姿を想像するにはかなりの知識が必要となります。子どもがのめりこむにはちょっと距離がありすぎる感じです。骨というものは学問的には非常に重要なものなのですが、普通の人にはわかりにくいものです。
一方、昆虫の方は本物の入手が簡単です。外国産のカブトムシ・クワガタムシでも一部の種は子どものお小遣いで買えるほどの安さで売られていたりします。これでは恐竜は昆虫には勝てないでしょう。

昆虫にしろ恐竜にしろ、生物が注目されるというのはうれしいことですが、その注目や関心がキャラクター商品などの商業世界に消費されてしまうことに私は頭をかかえてしまいます。その一方で、生物のことを世間に知らせるためには商業世界やマスコミを利用することも当然考慮せねばならないでしょう。
この問題は簡単に結論が出るものではありませんし、私もずっと悩んでいくことがらでしょう。このことについては今後も「いきもの通信」で繰り返し語られていくことでしょうね。


※先日、ムシキングの開発者が出演したテレビ番組を見たのですが、そのムシキングの画面の中ではアオスジアゲハが誤った飛び方をしていました。おいおい、ムシキングの開発チームにはその程度の理解しかないんですか…?
それと、新聞広告でダイノキングバトルの全面広告を見たんですが、うろことか模様がどうも納得できん…イラストレーターとしては。グラフィック面で専門家の監修をちゃんと受けたんでしょうかね、これは? ちょっとあやしいなあ、と思いました。


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