Vol. 522(2011/7/17)

[東京タヌキ探検隊!の歴史]
予想もしなかった大発見

2009年も順調に情報はやって来てくれました。数年前には考えられなかった多量のデータを前にして、私はふと思いました。「ひょっとして東京タヌキのことを世界一知っているのは私ではないだろうか」と。23区のタヌキ情報だけで当時400件超(この文章の執筆時点で790件)の情報がありました。しかもそれはデータベースとしてきちんと管理されています。これほどの情報を持っているのは世界でも私だけしかいないのは確実です。タヌキは東アジアの動物ですので、世界的にも研究者は少ないです。まして東京タヌキと限定すると、競争相手はごくわずかです。情報量では私が大きくリードしているのは間違いありません。しかも、いつの間にかに。本人も意識しないうちに世界一になってしまっていたのです。
メールによる情報収集なんて、何の苦労もなかったのだろう、と思う人はいるでしょうが、現実にこれを成功させるのは非常に非常に難しいことです。それに、私はホームページの作成も、イラストも、写真(一部を除く)も、文章も、自分だけでやったのです。これは誰にでもできることでしょうか? 信じられないかもしれませんが、東京タヌキ探検隊!は宮本1人でやっています。
東京タヌキ探検隊!は隊員募集はしていません。その理由は、調査研究は1人でやっていけるからです。もちろん金も時間も足りていないため、十分な活動を行えているわけではありませんが。それに、タヌキとの遭遇率は低いので誰でも調査できるわけではありません。またタヌキは警戒心が強いのでできるだけ少人数での行動の方がいいのです。
そして、誰かといっしょにやるとなると、どうしても遠慮してしまうことが多くなってしまうでしょう。何か判断するにしても時間がかかってしまいます。でも1人なら自分自身の都合で好きなだけ動けます。だからうまく行っているのかもしれません。


情報収集を継続した結果、とんでもない発見ももたらされました。
目撃情報の中にはタヌキではない動物も混じっていることにはっきりと気づいたのは2007年のことでした。例えば、塀の上を歩く、屋根の上を歩く…これはタヌキでは不可能なことです。なぜならタヌキは高いところに登ることができないからです。もちろん、踏み台になるようなものがあれば登ることはできるでしょうが、それでもそういう例はきわめて少ないのです。また、「尾が長い」などといった外見的な特徴からそれらがハクビシンであることは明らかでした。
私が集めていたのはタヌキの情報です。動物の判定は慎重に行い、タヌキ以外を除外しなければなりません。ですから、ハクビシンの情報はデータベースに記録する必要はありませんでした。しかし私はその逆を考えました。それほどまぎらわしいのなら、いっしょに情報収集をしちゃえ、と。ハクビシンの情報も集めれば、タヌキとの生息分布の違い、生態の違いなどもわかってくるかもしれません。それによってタヌキの情報の精度を高めることもできるかもしれません。似ている動物はハクビシンだけではありません。アライグマもそっくりです。アナグマもキツネも似た動物です。これらの目撃情報も同時に集めていこうと私は判断したのでした。

本格的に情報収集を開始したのは2008年6月、書籍「タヌキたちのびっくり東京生活」の発売の時でした。ホームページの大幅リニューアルを行い、「タヌキ?それともハクビシン?アライグマ?」というイラストで動物を比較するページを設けました。
このページは大当たりで、ネット検索でもすぐに上位に出てくるようになりました。
ハクビシンの目撃情報は順調に増え、2010年にはついにタヌキの目撃情報数を越えてしまいました。2011年はさらにそれ以上の速度で情報が集まっています。これは私でさえ予想できなかったことでした。このことはタヌキよりもハクビシンの生息数が多いことを示しているのかもしれません。ただ、ネット検索される単語は「タヌキ」よりも「ハクビシン」の方が圧倒的に多いこと、ハクビシンの方が珍しいと思われているらしいこと、などの理由から本当にハクビシンの方が多いのかは断言できません。ただ、どう考えても数百頭のレベルで生息しているのは確実です。
私が本来調べていたのはタヌキについてです。ですのでまさかハクビシンでこのようなとんでもない結果が出るとは思ってもいませんでした。まさに「副産物」なのです。不要な情報をあえて集めたことが大発見をもたらしたのです。

また、アライグマについても少数ながら目撃情報が集まり、こちらは23区内におそらく100頭以下が生息していると推測できます。そしておそらく一部地域では繁殖もしています。これもまた重要な副産物です。
アライグマは目撃情報数がまだ少ないため十分には分析できていません。しかし他の調査方法、例えばアンケートや聞き取り、目視といった方法でも情報収集は困難でしょう。アライグマの生息密度はかなり低いからです。私の調査方法ではコスト面で非常に有利です。


これまで4回にわたって東京タヌキ探検隊!史を紹介しましたが、時系列が前後していたり、十分に詳しく書いていないこと、意図的に書かなかったことがあります。
こういったことを整理した歴史はいずれまたどこかで書くことになると思います。その時をご期待ください。


[東京タヌキ探検隊!の歴史]
Vol. 516 1998年〜2003年のまだ全然成果がなかった頃のこと
Vol. 517 2006〜2008年、東京タヌキ探検隊!の開始/情報収集の安定化へ
Vol. 521 2008〜2010年ごろのこと

東京都23区内での最新のタヌキ情報については
東京タヌキ探検隊!
のページをご覧ください。

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