Vol. 212(2004/3/7)

[今日の勉強]試験に出ない動物英単語 哺乳綱霊長目編

さて、久しぶりの役に立たない動物英単語の時間です。今年がサル年であることがそろそろ忘れられようとしている今日この頃、今回は霊長目編といきましょう。

(第1回(食肉目編)第3回(クジラ目・カイギュウ目編)第4回(齧歯目編)第5回(偶蹄目編その1)第6回(偶蹄目編その2)第7回(翼手目・食虫目)第8回(残り全部編))


コビトキツネザル科

→dwarf lemur, mouse lemur

キツネザル科

→lemur, large lemur
「レムール」=「マダガスカル島のサルの総称」と言われることがありますが、狭義では「キツネザル属Lemur」のことです。広義では、コビトキツネザル科、キツネザル科、インドリ科となり、これらはすべてマダガスカル産となります。ですが、やはりマダガスカル産のアイアイがこれに含まれるんでしょうか?
ワオキツネザル→ring-tailed lemur
そのまんまですな。

インドリ科

→leaping lemur
「leap」とは「跳ぶ、跳びはねる」という意味。木から木へと飛び移る様子からきたものと思われます。が、地上を移動する時、横っ飛びに走る様子からきているのかもしれません(ベローシファカ)。基本的には森林に棲む種類ですので、おそらく前者が正解でしょう。

アバヒ→wooly lemur, woolly indri,avahi
「woolly」はヒツジのような「巻き毛」を意味しています。
シファカ属→sifaka
ベローシファカ→Verreaux's sifaka
こう書くと、ベローさんが発見したんだな、ということがわかりますね。
インドリ属→indri

アイアイ科

アイアイ→aye-aye
童謡でおなじみのアイアイです。

ロリス科

→loris, bushbaby
ロリス科はロリス類とガラゴ類に分けられます。前者が「loris」、後者が「bushbaby」と呼ばれます。
スローロリス→slow loris
ゆっくりとした動作がそのまま名前になってしまいました。ちなみにロリス類はどれも動きが遅いです。ガラゴ類は逆に活動的です。
ポットー→potto
ガラゴ類→bushbaby
ガラゴ属の属名が「Galago」です。「bushbaby」は狭義では「ショウガラゴ」を指すこともあります。

メガネザル科

→tarsier
メガネザルはフィリピン、インドネシアに生息する、大きな眼のサルです。英語では「メガネ」とは言いません。ロリス科も眼が大きいのですが、こちらは東南アジアからアフリカまで分布しています。
スラウェシメガネザル→spectral tarsier,Celebes tarsier,Sulawesi tarsier
「spectral」とは「幽霊の(ような)」という意味。和名でも、セレベスメガネザル、オバケメガネザルなどと呼ばれます。

ここまでが「原猿」と呼ばれるグループで、原始的な特徴を持つサルです。これらは普通「monkey」と呼ばれることはないようです。


以下は「真猿」と呼ばれるグループです。

マーモセット科

キヌザル科とも言います。アマゾンを中心とする中南米に生息します。
マーモセット類→marmoset
タマリン類→tamarin
ゴールデンライオンタマリン→golden lion tamarin
和名は英名からの直訳ですね。

オマキザル科

→New World monkey
「オマキザル」というとわかりにくいのですが、英語で言うと「新世界ザル」。こっちの方が適切な呼び名かもしれません。ただし、どれも中南米生息で、北米にはいません。北米に定住している霊長目は多分ヒトだけだと思います。
「尾を巻く」とは尾を使って木の枝などをつかむことができることを指します。これは次に登場するオナガザルではできないことです。ただし、オナガザル科でもリスザルなど尾で物をつかめない種類もけっこういたりします。

オマキザル属→capuchin
ヨザル属→night monkey, owl monkey
ティティ属→titi
リスザル属→squirrel-monkey
サキ属→saki
ヒゲサキ属→beared saki
ウアカリ属→uakari
ウアカリ属は尾が短いので、枝をつかめません。シロウアカリ、アカウアカリは頭頂〜前頭が無毛で、赤っぽい皮膚の色なので、異様な顔立ちです。
ホエザル属→howler
「howl」とは「吠える」という意味。
クモザル属→spider monkey
手足と尾が長い姿から名前がつきました。
ウーリーモンキー属→woolly monkey

オナガザル科

→Old World monkey
「新世界ザル」がいるなら「旧世界ザル」もいるわけで、こちらはアジア、アフリカに生息するサルです。
「尾が長い」といっても、尾が短い種類は多数含まれます。

マカク属→macaque
属名は「Macaca」なので、「マカカ」と呼ぶこともあります。
カニクイザル→crab-eating macaque, long-tailed macaque
ニホンザル→Japanesu macaque
「マカク」と言ってもピンとこないと思いますが、実はニホンザルもこの仲間。英語では「日本マカク」と呼ばれます。マカク属はインド〜東南アジア〜日本と広く分布するグループです。
ブタオザル→pig-tailed macaque
シシオザル→lion-tailed macaque

マンガベイ属→mangabey
ヒヒ属→baboon, savanna baboon
マントヒヒ→hamadryas baboon
「hamadryad」=「ギリシア・ローマ神話の樹木の精」からきているようです。
マンドリル属→forest baboon
ヒヒ属が「サバンナのバブーン」、つまり陸上生活。そして、マンドリル属は「森のバブーン」です。ただし、木に登ることはなく、地上生活をします。
ドリル→drill
マンドリル→mandrill

オナガザル属→guenon
ブルーモンキー→blue monkey
ブラッザモンキー→de Brazza's monkey
「ブラッザグエノン」とも言います。昨年末に上野動物園に来た「水戸黄門ザル」がこれです。白くて長いあごひげ、頭のオレンジ模様(頭巾のように見える)がまるで黄門様です。カッカッカッ(笑)(とは笑いません。多分)。

コロブス属→colobus

ドゥクモンキー属→統一的な名前はないようで、「douc monkey」または「snub-nosed monkey」と名がつきます。
ゴールデンモンキー→golden snub-nosed monkey
またの名は「チベットコバナテングザル」。というよりも「金糸猴(きんしこう)」といった方がわかりやすいでしょう。孫悟空のモデルになったともいわれるサルです。「snub-nosed」とは「しし鼻の」という意味です。鼻が大きいというより、鼻の穴が正面を向いていることからの命名のようです。オナガザルの仲間で鼻の穴が正面に開いているのは珍しいのです。

テングザル属
テングザル→proboscis monkey
「proboscis」は「ゾウのような大きな鼻」という意味です。外国に「天狗」はいませんからね。
リーフモンキー属→leaf monkey
ハヌマンラングール→Hasuman langur, common langur, gray langur
インドでは神様扱いのサルです。


ここからは類人猿のグループです。やはり「真猿」のグループに入ります。類人猿は尾がありません。ちなみに、類人猿はオマキザルではなく、オナガザルの系統になるそうです。
類人猿全体は「ape」と呼ばれます。だから、「Planet of the apes」は「猿の惑星」というよりも「類人猿の惑星」と言った方が正解。確かに、登場するのは類人猿ばかりですので間違いではないのです。

テナガザル科

→gibbon

ショウジョウ科

オランウータン→orang-utan
チンパンジー→common chimpanzee
ピグミーチンパンジー→pigmy chimpanzee, bonobo
最近では「ボノボ」の名前も定着してきました。
ゴリラ→gorilla

ヒト科

ヒト→man
そうです、人間も霊長目であることをお忘れなく。


さて、次回はいつになるかわかりませんが、クジラ目あたりをやりましょうかね。


おまけ

今回の原稿を書いていて、上野動物園のサルで「水戸黄門ごっこ」ができることが判明しました(笑)。配役は以下の通り。

黄門様→ブラッザモンキー
 これは文句無しに決定。

助さん・格さん→アビシニアコロブス、ジェフロイクモザル?(種名をよく覚えていない)
 お互い隣同士、体格も近いので「助さん・格さん」に。「オナガザル・オマキザル」という組み合わせなので、分類学の説明にも便利かと。

かげろうお銀→アイアイ
 夜行性ですから(笑)。黒い体色も「忍びの者」っぽい?

うっかり八兵衛→ニホンザル
 まあ、表情が、ね。(サル山は八兵衛だらけ?!(笑))

柘植の飛猿→テナガザル(これも種名不明)
 器用に木々を渡る姿が忍者っぽいので。

悪代官→マンドリル
 「むふふ、おぬしもワルよのう〜」 悪役面ですからね〜。でも私はマンドリルは好きです。

悪代官の用心棒→ゴリラ
 ほんとはシャイで寡黙な正確なので、適役かどうかは疑問もあります。でも、「わけありの無口な剣豪」っぽくていいかも?

その他エキストラ→ニホンザル
 サル山には老若男女そろっていますので。

えーと、「風車の弥七」には適役がいませんねー。他にどんなサルがいましたっけ? ワオキツネザルって上野にいたかな〜? よく覚えてません。
コモンマーモセットというサルもいるんですが、これは小柄なんですよね。どんな役が合うかな〜?と考えてみました。こういうのでどうでしょう。
「悪代官に娘を人質にとられて、やむなく密売に手を染めた弱小商人。黄門様のおかげで最後はまっとうな商売に戻れてハッピーエンド」

上野動物園にお越しの際は、この「水戸黄門ごっこ」の配役を思い出してにやにやしてください(笑)。


参考文献

今泉吉典 監修「世界哺乳類和名辞典」(平凡社)
「決定版 生物大図鑑 動物 哺乳類・爬虫類・両生類」(世界文化社)


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