哺乳綱翼手目・食虫目編
う〜ん、ネタがない。たまにはこういうこともあります。
そこで、ずいぶん久しぶりになりますが、「試験に出ない動物英単語」の続きをやってみましょう。前回からは2年以上も間があいてしまいましたが…。
今回は翼手目からです。
翼手目とは、コウモリのことです。
コウモリの場合、基本的にはオオコウモリ科が「flying fox」、その他のコウモリ(小型のコウモリ)が「bat」となります。全体では1000種以上もいるのに、たったこれだけでくくられているのです。もちろん、それぞれの種は形態的な差異があるのですが、人間から見れば「膜状の翼を持つ動物」でひとくくりなのです。
オオコウモリの「flying fox」は、文字通りキツネのような顔が由来です。まあ、それほどキツネっぽいかどうかは見方が分かれるでしょうが、一般的なコウモリ顔のイメージとはかなり違う、ケモノっぽい顔つきです。
オオコウモリは「fruit bat」「Old World fruit bat」という呼び方もあります。「フルーツ」なんてかわいらしい名前ですが、これはオオコウモリ類の多くが果実を食べることに由来します。
まず、オオコウモリ科から見ていきましょう。
ルーセットオオコウモリ属→rousette、dog fruit bat
クビワフルーツコウモリ属→collared fruit bat
ウマヅラコウモリ→hammer-headed bat ホントに馬面なコウモリなのですが、英語では「ハンマー頭」です。
ケンショウコウモリ属→epauletted fruit bat 「ケンショウ」って何だ?と思ったら、「肩章」のことでした。
オナシフルーツコウモリ属→tailless fruit bat
テングフルーツコウモリ属→tube-nosed fruit bat
ヨアケオオコウモリ属→dawn fruit bat
ハナフルーツコウモリ属→blossom bat
以上のように属名は「fruit bat」でも、種レベルでは「flying fox」の名がつく場合が多くあります。
次は小型のコウモリです。
オナガコウモリ科→mouse-tailed bat、rat-tailed bat、long-tailed bat
キティブタバナコウモリ→Kitti's hog-nosed bat、batterfly bat 「世界最小の哺乳類」として有名です。頭胴長約3cm、翼開張15cm、体重1.5〜3.0gという超小型です。ちなみに、私は「キティちゃん」と呼ぶことにしています。ブタ鼻のキティちゃんです(笑)。
キクガシラコウモリ科→horseshoe bat 「horseshoe」とは蹄鉄のことです。鼻の形が馬蹄状であることからきています。
ウオクイコウモリ科→bulldog bat、fisherman bat 水面すれすれを飛んで、水中の魚を捕獲するという超絶技巧のコウモリです。
クチビルコウモリ科→leaf-chinned bat 英語の方よりも日本語の方が気になる名前です(笑)。くちびるが歯のように突起しているとのことです。
ヘラコウモリ科→spear-nosed bat
ヘラコウモリ科はコウモリの中でも2番目に大きなグループで、種名にもいろいろなものがあります。
ミクロミミナガコウモリ属→big-eared bat
トームズミミナガコウモリ属→sword-nosed bat
マルミミヘラコウモリ属→round-eared bat
バナナシタナガコウモリ→banana bat
テントコウモリ→tent-building bat、tent-making bat
モリヘラコウモリ属→tree bat
そして、このヘラコウモリ科にはチスイコウモリ属、つまり吸血コウモリも含まれています。チスイコウモリ属は「vampire bat」。そのままですね。
ツメナシコウモリ科→thumbless bat 英語では「親指のない」ですので、日本語とは異なっています。ちなみに、親指自体は存在するそうですが、機能しないと書かれてあります。
スイツキコウモリ属→disk-winged bat 親指に皿状の吸盤があることが由来です。
ヒナコウモリ科→common bat、vesper bat
翼手目の1/3以上の大勢力がヒナコウモリ科です。「vesper」とは「宵」「夕べ」の意味です。
ホオヒゲコウモリ属→mouse-eared bat、little brown bat この仲間は属名の「myotis」と呼ばれる種が多いようです。
アブラコウモリ属→pipistrelle 日本の都会の空を飛んでいるアブラコウモリです。名前の由来は不明。
クビワコウモリ属→serotines、brown bat
イブニングコウモリ→great evening bat 学名は「Ia io」。おそらく、全生物の中でも最も短い学名なのではないでしょうか。
ウサギコウモリ属→long-eared bat
トランペットコウモリ属→trumpet-eared bat
オヒキコウモリ科→free-tailed bat
翼手目は数が多すぎて、日本語でも英語でもやっつけ仕事で命名しているのではないか?と思わせるものがたくさんあります。お暇な方は図鑑を眺めて命名者の苦労を味わってみてください。
お次は勢いで食虫目に行ってみましょう!
食虫目とは、モグラ科、トガリネズミ科、ソレノドン科、ハリネズミ科、キンモグラ科、テンレック科をひとまとめにしたグループです。ですが、これらは「どこにも分類できなかったものをとりあえずまとめたもの」という感じのもので、再分類が昔から検討されていたグループです。
最近の遺伝子研究などを取り入れた研究の結果、トガリネズミ目、ハリネズミ目、アフリカトガリネズミ目に分けられることになったようです。
トガリネズミ目=モグラ科、トガリネズミ科、ソレノドン科
ハリネズミ目=ハリネズミ科
アフリカトガリネズミ目=キンモグラ科、テンレック科
ということのようですが、ホントにこれで確定ですよね? 分類学というのは今もなお進行中の学問なのです。
モグラ科
一般には、
モグラ類→mole
ヒミズ類→shrew-mole (トンネルを掘るが、食事は落葉層でする)
デスマン類→desman (水棲)
となります。
日本産では、
アズマモグラ→Japanese mole
コウベモグラ→large Japanese mole
ヒミズ→greater Jaranese shrew-mole
という平凡なものです。
ホシバナモグラ→star-nosed mole 鼻先が細かく分裂しているモグラです。
トガリネズミ科→shrew
上の「ヒミズ」のところでもshrewとでてきましたが、これはトガリネズミのことを指します。発音は「シュルー」。小さくて鼻がとがってるやつはなんでも「shrew」と名付ける傾向があります。ちなみに、「ネズミ」と名がつきますが、齧歯目とはまったく異なるグループです。
ケムリトガリネズミ属→moutain shrew
ジネズミ属→white-toothed shrew
ジャコウネズミ属→dwarf shrew
モグラジネズミ属→mole-shrew
ヨロイジネズミ属→armored shrew なんか強そう…(笑)。
トガリネズミは食虫目最大のグループですが、名前として面白くないかもしれません。
ソレノドン科→solenodon
ハリネズミ科→hedgehog
ゲームの「ソニック・ザ・〜」のアレです。「ハリネズミのジレンマ」とかでも有名ですかね。ヤマアラシ(齧歯目)もhedgehogと呼ぶことがあるようですが、こちらは正しくは「porcupine」です。
ジヌムラ類→moonrat 「ジヌムラ」とは種ジヌムラの種小名「gymnurus」から来ています。
キンモグラ科→golden mole
アフリカにのみ生息します。モグラ同様に地中に生活しますが、分類上ではかなり離れています。
テンレック科→tenrec
ポタモガーレ→giant otter shrew 「ポタモガーレ」は属目「Potamogale」そのままです。
その他の哺乳類から、かつては食虫目に分類されることもあったものを説明します。
ツパイ目→tupai、tree shrew
「shrew」というのがまさに食虫目の名残です。今となっては「tupai」を使うべきでしょうね。
皮翼目
ヒヨケザルのことです。英語では「flying lemur」または「colugo」。
「lemur」とは「キツネザル(霊長目)」のことで、確かにサルっぽくも見えないこともありませんが、かつては食虫目とされていました。
さて、哺乳類も残り少なくなってきました。
あと1回で完了すると思います。