Vol. 292(2005/11/20)

[今日の勉強]試験に出ない動物英単語

哺乳綱齧歯目編

ちょっとネタ切れしてしまったので、かなり久しぶりに「試験に出ない動物英単語」をやってみましょう。今回は齧歯目、つまりネズミ、リスの仲間です。

(第1回(食肉目編)第2回(霊長目編)第3回(クジラ目・カイギュウ目編)第5回(偶蹄目編その1)第6回(偶蹄目編その2)第7回(翼手目・食虫目)第8回(残り全部編))


まずはリス科を見ていきましょう。

リス→squirrel
リス科はだいたい「squirrel」です。以下では例外を挙げてみましょう。

マーモット→marmot
 マーモット属のウッドチャックは「woodchuck」「ground hog」となります。
プレーリードッグ→prairie dog,barking squirrel
シマリス→chipmunks
ムササビ→giant flying squirrel
モモンガ→flying squirrel
日本語ではムササビ、モモンガと区別しますが、英語では単に「飛ぶリス」となります。クサビオモモンガ属、コビトモモンガ属は「pygmy flying squirrel」と呼びます。ただし、クサビオモモンガ属は他のモモンガ類に比べてそんなに小さいわけではありません。


次はリス科、ネズミ科以外の齧歯目を見ていきましょう。

ホリネズミ→pocket gopher
ポケットマウス→pocket mouse
カンガルーネズミ→kangaroo rats
ビーバー→beaver
ヤマネ→dormouse
トビネズミ→jerboa
ヤマアラシ→porcupine
テンジクネズミ→guinea pig
 「テンジクネズミ」といってもピンとこないでしょうが、要するにおなじみモルモットのことです。ペットとして知られるモルモットの原種は種ペルーテンジクネズミです。実は、モルモットは「marmot」と書きます。あれ?さっき出てきたマーモットも「marmot」だったのでは? と気づいた方もいるかもしれませんが、そうなんです、同じつづりなのです。これは、16世紀にオランダ人がテンジクネズミ(おそらくペルーテンジクネズミのこと)を南アメリカからヨーロッパに持ち込んだとき、マーモットと誤認したためにこの名がついた、とのことです。ですからモルモットという名前は間違いであって、本当は「ギニアピッグ」と呼んだ方が正しいのです。ペット店で毛の生えていない大きなネズミ「スキニーギニアピッグ」を見たことがある方もいるでしょうが、これはつまり、毛が生えない品種のテンジクネズミなのです。
テンジクネズミ科には他に、モコ=moco、クイ=cui、マーラ=maraといったものがいます。
カピバラ→capybara 世界最大の齧歯目です。
パカラナ→pacarana
アグーチ→agouti
パカ→paca
チンチラ→chinchilla ネコのペルシャの品種のひとつにチンチラというものがありますが、オリジナルはこの齧歯目の動物です。
ビスカーチャ→viscacha
フチア→hutia
ヌートリア→nutria 日本でも有害外来種として有名です。
トゲネズミ→spiny rats
デグー→degu
ツコツコ→tuco-tuco
グイラトゲネズミ→guira
トロトゲネズミ→toro
コロコロトゲネズミ→coro-coro このあたりはネズミにしては独特な名前ですね。
ヨシネズミ→cane rat 「cane」とはトウ、タケ、サトウキビなどを指すようです。
グンディ→gundi


さて、ここからは齧歯目の主役であるネズミ科に入ります。
その前に、ちょっとお勉強をひとつ。「ネズミ」の英単語には「rat」と「mouse」の2つありますが、この区別はご存知でしょうか。大きいのがrat、小さいのがmouseと思われている方も多いでしょうが、生物学的に言うとちょっと違います。狭義では、ratはネズミ科ネズミ亜科クマネズミ属に属する種を指します。クマネズミ属の学名は「Rattus」となっています。もっとしぼれば、世界中に生息しているドブネズミ、クマネズミのことだと言っていいでしょう。クマネズミ属全体では60種ほどが含まれます。一方、mouseの方は狭義ではずばり種ハツカネズミを指しています。分類ではネズミ科ネズミ亜科ハツカネズミ属に属し、属名は「Mus」です。ハツカネズミ属には40種ほどが含まれますが、世界的に生息しているのは種ハツカネズミだけです。つまり厳密には、ratとmouseは汎世界的に生息するドブネズミ、クマネズミ、ハツカネズミだけに与えられた特別な名前だと言えるのです。ですが、実際にはその他のネズミ類、齧歯目の呼称でもrat、mouseは用いられており、この狭義の定義は全体ではあまり意味を持たないものでもあります。
ネズミ科は「〜rat」「〜mouse」という名称が多いのであまり面白くありません。以下は、かなりかいつまんで紹介をします。
コメネズミ→rice rat
キノボリネズミ→climbing rat
シカマウス→deer mouse まんま「鹿ネズミ」って…いったいどういうのだろう?
キンイロマウス→golden mouse
バッタマウス→glasshopper mouse これもそのままですね。やっぱりジャンプするんでしょうか?
ウサギネズミ→rabbit rat そんなやつがいるんだ…。
カザンマウス→volcano mouse 「火山ネズミ」。生息地と関係があるようですが、詳細不明。

キヌゲネズミ→hamster
おなじみ「ハムスター」です。ハムスターは広義ではキヌゲネズミ亜科(20種ほど)のことを指します。日本ではゴールデンハムスターgolden hamster、クロハラハムスターcommon hamster(black-bellied hamster)(ヨーロッパハムスター)、キャンベルキヌゲネズミCampbell's hamster(キャンベルハムスター)、ロボロフスキーキヌゲネズミDesert hamster(ロボロフスキーハムスター(ロボロフスキーのつづりはRoborovskyまたはRoborovski))、ヒメキヌゲネズミDzungarian hamster(Djungarian hamster,striped hairy-footed hamster)(ジャンガリアンハムスター)、モンゴルキヌゲネズミChinese rat-like hamster(チャイニーズハムスター)といったあたりがよく知られていますが、これらはそれぞれ別の種です。イヌやネコはひとつの種の中で、「品種」という多様なバリエーションが作られてきましたが、ハムスターの場合はそれよりもレベルが一段階上であり、イヌ、ネコと同じような扱いはできないのです。
※キャンベルとジャンガリアンの和名については混乱があるようですが、とりあえずこれまで知られていた表記にしています。

メクラネズミ→mole-rat 地中にすんでいるので「モグラネズミ」というわけです。
モグラネズミ→zoker ところがややこしいことに、和名「モグラネズミ」というのが別にあったりするのです。
タケネズミ→bamboo rat
ハタネズミ→lemming,vole おなじみ「レミング」です。
マスクラット→muskrat 「ジャコウネズミ」と直訳すると全然別の動物になってしまうのでご注意を。マスクラットもハタネズミの仲間です。
アレチネズミ、スナネズミ→gerbil,jird いずれも「アレチネズミ亜科」に属していますが、2つの名前が混在しています。
ミズネズミ→water rat

ドブネズミ→Norway rat,common rat,brown rat
クマネズミ→roof rat,house rat,black rat,sips rat
ハツカネズミ→(East Europian) house mouse
世界を席巻した3大ネズミの英名はこんな具合です。ちなみにドブネズミはアジア原産とされていますので、ノルウェーと関係があるわけではありません。


齧歯目ほ種数では哺乳類の半分近くを占めますが、かなりの数が「〜rat」「〜mouse」という命名になっており、名前としてあまり面白いものではありません。
さて、次はどれをとりあげましょうか。大きなグループとしては偶蹄目(ウシ、シカなど)が残っていますので、これを取り上げることになるだろうとは思いますが、どうなるかは未定です。


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