哺乳綱偶蹄目編その1
(第1回(食肉目編)、第2回(霊長目編)、第3回(クジラ目・カイギュウ目編)、第4回(齧歯目編)、第6回(偶蹄目編その2)、第7回(翼手目・食虫目)、第8回(残り全部編))
どうも最近事件も話題もあまりないようですね。というわけで今週も続けて「試験に出ない動物英単語」をやりましょう。今回は偶蹄目です。
偶蹄目といってもピンと来ない方も多いと思いますが、ウシ、シカがその代表で、イノシシ、カバ、ラクダ、キリンといった大型の哺乳類が含まれます。「偶蹄」の名前の通り、蹄(ひづめ)が偶数個あるグレープです。ということは、蹄が奇数個の「奇蹄目」というのがあるのか?と思われた方、当たりです。奇蹄目にはウマ、バク、サイが含まれます。ですが奇蹄目は全部で20種しかいない超少数派です。偶蹄目はウシ科だけで134種、全体で約210種にもなる大グループです(霊長目より多い)。
それでは、英語の勉強を始めましょう。
イノシシ科
イノシシ→pig,hog
いやー、そうなんですよね。ブタってのはイノシシを家畜に改良した動物ですから、どっちもpigというわけです。イノシシの品種改良の歴史は浅く、中世の頃の家畜ブタはまだ牙があったそうで、かなり危険な家畜だったそうです。
ちなみに、野生のイノシシは「wild pig」、家畜のブタは「domestic pig」と呼び分けるようです。
ヨーロッパイノシシ→wild boar 「boar」も辞書ではイノシシの意味になってが、狭義では種ヨーロッパイノシシ(Sus scrofa)のみを指すようです。
イボイノシシ→warthog 「wart」とは「いぼ、こぶ」という意味です。
バビルーサ→babirusa オスの牙が異常に長く湾曲しているイノシシです。
ペッカリー科
ペッカリー→peccary ペッカリーといっても知らない方が多いでしょうね。外見はイノシシそのものですが、イノシシ科とは別のペッカリー科に分類されます。何が違うのかというと、イノシシ科はユーラシア大陸、ペッカリー科はアメリカ大陸に生息しているのです。
カバ科
カバ→hippopotamus 学名も英名と同じです。「ヒポポタマス」では長いので、くだけた会話では「hippo=ヒッポ」と呼ばれることが多いようです。
コビトカバ→pigmy hippopotamus
ラクダ科
ヒトコブラクダ→dromedary,Arabian camel,one-humped camel
フタコブラクダ→Bactrian camel,two-humped camel
ヒトコブラクダは「アラブのラクダ」、フタコブラクダは「バクトリア(現在のアフガニスタン)のラクダ」というわけです。ちなみにヒトコブラクダは野生品種は知られていません(オーストラリアでは再野生化していますが)。つまり、ヒトコブラクダはすべて人間の飼育下にあるのです。
ラマ(リャマ)→llama
グアナコ→guanaco
アルパカ→alpaca
ビクーニャ→vicuna
これらはいずれも南米に生息するラクダ科の動物です。ラマのつづり「llama」はミスタイプではありません。ただし、学名(属名)はLama、フランス語、ドイツ語でもlamaですので、lamaでも通じるんではないかと思います。ただ、英語の「lama」はチベットのラマ教のことも指し、高僧ダライ・ラマの「ラマ」も「Lama」です。
キリン科
キリン→girrafe
オカピ→okapi
マメジカ科
マメジカ→chevrotain,mouse deer
最小の偶蹄目がマメジカ類です。最小のジャワマメジカだと肩の高さが20cmだそうで、小型犬の大きさです。偶蹄目の多くは消化器官内の細菌を利用して食べた植物を分解します。例えばウシがそのよく知られた例です。偶蹄目は消化器官を特殊化させたため、体全体もそれにあわせて大型化したとされています。ところが、マメジカは偶蹄目にしてはあまりにも小さ過ぎ、本当に植物だけしか食べないのか?小動物も食べてるんじゃないか?という疑念も私は持ってます。ただ、実際の飼育では植物性の食べ物だけで問題ないようです。
ジャコウジカ科
ジャコウジカ→musk deer
シカ科
シカ→deer
シカといえば「deer」なんですが、実際は種類によって細かい固有名があります。
ホエジカ→muntjac
キョン→Reeves's muntjac,Chinese muntjac
キョンもホエジカの仲間なんですね。リーブさんとはおそらく命名者の名前。
アクシスジカ→chital,axis deer
ワピチ→wapiti
アカシカ→red deer,maral,hangul,shou,Bactrian deer,Yarkand deer
ワピチとアカシカはよく似ており、ワピチをアカシカの亜種とする分類もあります。北米ではこの亜種はワピチまたはエルクelkと呼ばれるそうです。elkは下にも出てきますが、ヨーロッパではヘラジカを指す名前ですのでご注意を。
ターミンジカ→thamin,Eld's deer
ニホンジカ→sika deer,Japanese deer
日本語の「鹿」がそのまま通用します。
タイワンジカ→Formosan sika 「Formosan」とは「台湾」の意味です。
サンバー→sambar
シフゾウ→Pere David's deer 漢字では「四不像」と書きます。これは、蹄はウシ、角はシカ、顔はウマ、体はロバに似ているが、そのどれでもない、というところからきています。ですがシカの仲間です(あっさり)。シカにしては大きい(トナカイ並みの大きさ)のですが、角を見ればシカであることは明らかです。でも英語だと実につまらない名前ですね。これも命名者の名前でしょう。
ヘラジカ→moose,elk ムース、エルクがヘラジカです。次のトナカイも含めて日本語での呼び方も混乱しているようなので注意してください。ヘラジカとトナカイの違いは、ヘラジカの方が大きい、ヘラジカの角は手のひら状に枝分かれする、トナカイはシカ科で唯一メスにも角がある、トナカイは北極圏のツンドラ地帯に生息する、ヘラジカはトナカイよりも南の地域に生息する、といったところです。
トナカイ→reindeer,caribou カリブーとはトナカイのことです。「トナカイ」の語はアイヌ語起源です(サハリンにも生息しています)。
ミュールジカ→mule deer,black-tailed deer
オジロジカ→white-tailed deer
ゲマルジカ→Chilean huemul,guemal
マザマ→brocket
プーズー→pudu
ノロ→roe deer
さて、残すはウシ科だけとなりましたが、ウシ科は数が多いだけでなく、個別に独特の名前がついているものが多く、かなりの量になります。そこで、今回は短めですがこれで終了、残りは次回に持ち越したいと思います。